採集・製造

866 ~ 867

麁朶ひびに付着した海苔の採集は、その年の気候によって多少左右されるが、大体十月中旬~下旬に始まる。初海苔は御膳海苔として献上され、その後二週間に一回くらいずつ採っていく。寒海苔がもっとも美味とされ、正月中旬から二月中旬くらいまで採巣が続けられる。暖かくなってからの海苔は色が赤く、馬鹿海苔といわれて売買値段も安かった。宝暦七年(一七五七)の書上によると、大井村・海晏寺門前・品川寺門前・南品川宿の海苔稼ぎの期間は、十一月より二月までのうち三六日で、二月中旬になると、くさってしまうと述べている。

 ハ図はのり摘みをしているところである。ベカというのり摘み専用の小舟に乗って、麁朶に生じた海苔を素手で摘み取り、ざるに入れ家へ帰ってから(ニ図)の如く真水ですすぎ、麁朶の小枝などのゴミを取り除く、それから両手に庖丁を持って細かくたたき(ホ図)、簀の上にすき上げて(ヘ図)、屋外で乾燥させるのである(ト図)。

 宝暦七年当時の南品川宿ほか三ヵ村の海苔の摘み取り製造に要する経費を計上すると第52表のようになる。ひび建てに費した分と合わせて三六〇両三分永一五二文八分である。

第52表 海苔採集・製造経費
採集・製造の経費(宝暦7年
大井村他3カ村)
貫 文
松明24日分 224.800
喰物24日分 241.404
薪36日分 168.750
炭36日分 84.300
草鞋36日分 158.60
水油24日分 95.538
140.624
海苔取ざる 28.132
海苔干簀台 140.500
合計 貫 文
1364.62
両  文分
(305.永100 7)