散髪

120 ~ 121

「ザンギリ頭をたたいてみれば文明開化の音がする」「チョンまげ頭をたたいてみれば頑迷固陋の音がする」とは、維新後の男性の大きな風姿上の変化を示すものである。もちろん明治のはじめは大方はチョンまげであったが、明治四年四月になって市民に散髪をしてもよいという断髪令が出た。品川の宿の人々は、外人が横浜から東京へ往来する姿などをみつけているから比較的「ザンギリ姿」になることをモダンだと思う人々も少なくなく、わざわざ横浜まで出かけて、散髪してハイカラがる人もあったという。しかし汽車が開通した五年以後は、旧髪結床のうちに、髪を結ぶより髪をきる方に転向する者があり、散髪業に従事する者ができて、品川の宿内で散髪ができるようになってゆき、時とともに次第にチョンまげ姿が減少していったが、なかには頑として髪を切らぬものもあったから、明治の中ごろまでは頭の方はまだ入り混りの姿だったという。