戦争が拡大するにつれて、労働組合などの組織的な運働が後退していった。とくに労資一体の産業報国会がつくられ、産業報国運動が全体の傾向となっていった。品川区・荏原区でもおもな事業所には産業報国会が設立された。名称・所在地などは次の表のとおりであった。
名称 | 会長 氏名 | 所在地 |
---|---|---|
(荏原支部) | ||
東交試験機製作所産報会 | 斎藤由蔵 | 荏原区荏原一ノ四六二 |
不動産報会 | 山中松五郎 | 〃 小山台一ノ六一 |
協栄産報丸中ローソク製作所 | 山崎浅一 | 〃 小山二ノ四四〇 |
東京瓦斯株式会社荏原営業所産報会 | 竹内徹二 | 〃 平塚三ノ七二二 |
八幡産報会 | 松井康文 | 〃 東戸越三ノ一〇六四 |
株式会社戸越精機製作所産報会 | 沢井佐美 | 〃 平塚一ノ五五〇 |
中原産報会 | 野川順一 | 〃 平塚一ノ五四二 |
日本ゴム工業株式会社産報会 | 大村博 | 〃 平塚三ノ七六八 |
東京電燈株式会社小山営業所産報会 | 姫野寅之助 | 〃 小山三ノ九 |
三谷産報会 | 土田国松 | 〃 小山三ノ八三 |
ゼーオー螺旋製作所産報会 | 小野重左衛門 | 〃 小山三ノ一一〇 |
株式会社三栄製作所産報会 | 堀内猪之助 | 荏原区小山五ノ八八 |
金鵄産報会 | 高梨八三 | 〃 小山五ノ三〇四 |
合名会社堀内製作所産報会 | 堀内幸松 | 〃 荏原四ノ一七三 |
中央産報会 | 清水誠治 | 〃 荏原四ノ一九五 |
平塚産報会 | 伊藤喜作 | 〃 平塚三ノ六八九 |
合名会社田中製革所産報会 | 田中謙 | 〃 荏原一ノ二九八 |
東洋酸素機械株式会社産報会 | 石川龍雄 | 〃 小山一ノ三八〇 |
日の丸産報会 | 佐久間章公 | 〃 二葉町六ノ三八〇 |
株式会社大興電機製作所産報会 | 古川梅三郎 | 〃 西中延四ノ一二八八 |
電機工業株式会社産報会 | 水島周平 | 〃 平塚四ノ二三七 |
親和産報会 | 本幡敏 | 〃 西中延五ノ一二三三 |
三和産報会 | 海老沢正 | 〃 東中延一ノ三二二 |
藤倉航空工業株式会社産報会 | 関口善吉 | 〃 荏原二ノ二六二 |
日満工業株式会社産報会 | 後藤元治 | 〃 小山六ノ四二六 |
富士光材製造株式会社産報会 | 溝尻房蔵 | 〃 小山台二ノ一二八 |
松本電機製作所産報会 | 松本亀次郎 | 〃 豊町四ノ二七一 |
(品川支部) | ||
東光電気産報会 | 柏木秀一 | 品川区北品川五ノ八四五九 |
東洋製缶株式会社産報会 | 堀越一三 | 〃 〃 五ノ四八四 |
南品川相互産報会 | 浅田常五郎 | 〃 南品川五ノ五一 |
株式会社岡田電気商会産報会 | 岡田悌蔵 | 〃 〃 三ノ一五六一 |
中島電機製作所産報会 | 中島勝五郎 | 〃 〃 四ノ五八一 |
ヂーゼル自動車工業産報会 | 弓削靖 | 〃 東品川五ノ六一 |
品川精機株式会社産報会 | 砂長谷哲夫 | 〃 〃 四ノ一〇 |
高速機関工業産報会 | 堤和雄 | 品川区東品川五ノ五〇 |
株式会社大塚製作所産報会 | 大塚伊三郎 | 〃 〃 四ノ五 |
南品川第一産報会 | 池田倉太郎 | 〃 南品川一ノ九四七 |
日本特殊工業株式会社産報会 | 沼川佐吉 | 〃 東品川四ノ三五 |
株式会社日本化器製作所産報会 | 大来修佐 | 〃 北品川五ノ四二八 |
日本高周波重工業産報会 | 菊地麟平 | 〃 〃 五ノ四九三 |
明治ゴム産報会 | 田路胤夫 | 〃 〃 三ノ二五八 |
株式会社品川製作所産報会 | 武鶴次郎 | 〃 〃 五ノ四二一 |
〃 東京衡器製造所産報会 | 古庄五男 | 〃 〃 四ノ五一六 |
陸王内燃機株式会社産報会 | 塩原禎三 | 〃 〃 三ノ二八七 |
株式会社明電舎産報会 | 飯田歌吉 | 〃 〃 二ノ七五〇 |
〃 小糸製作所産報会 | 小糸源六郎 | 〃 東品川四ノ二六 |
三共株式会社産報会 | 鈴木芳太郎 | 〃 西品川一ノ八八八 |
日下製作所産報会 | 日下武一 | 〃 〃 二ノ一一〇九 |
友田製薬産報会 | 友田〓三郎 | 〃 〃 二ノ一一一四 |
菅沼研究所産報会 | 菅沼整 | 〃 〃 四ノ一〇一七 |
西品川中央産報会 | 白川幸作 | 〃 〃 五ノ九六六 |
〃 産報会 | 野村市造 | 〃 〃 四ノ九二三 |
富士工業株式会社産報会 | 池田権次郎 | 〃 東品川四ノ四二 |
明石産報会 | 明石和衛 | 〃 〃 五 |
品川燃料株式会社産報会 | 安宅武 | 〃 〃 四ノ四 |
奥田航器産報会 | 奥田寅蔵 | 〃 〃 四ノ三三 |
東京ラジエータ製造株式会社産報会 | 池貝秀雄 | 〃 〃 五ノ八 |
斎藤鉄工所産報会 | 斎藤富造 | 〃 〃 四ノ四六 |
東京特殊鋼産報会 | 志水懐民 | 品川区東品川四ノ一六 |
井桁硝子工業所産報会 | 井桁亮 | 〃 〃 四ノ二五 |
理研電機製造水力機部品川工場産報会 | 林俊一 | 〃 〃 四ノ三四 |
東京〓工業産報会 | 岩下和策 | 〃 〃 四ノ一一二 |
板下電気歩□会関東分会第二支部産報会 | 松下幸之助 | 〃 〃 五ノ二四 |
日産金属工業所産報会 | 崎浜朝恭 | 〃 〃 四ノ七四 |
株式会社十南鉄工所産報会 | 十南一夫 | 〃 〃 四ノ二七 |
東亜製作所産報会 | 斎藤源作 | 〃 〃 四ノ八〇 |
株式会社河田製作所産報会 | 河田兼治 | 〃 〃 三ノ二ノ二 |
株式会社芝浦合金鋳造所産報会 | 鈴木文二 | 〃 〃 四ノ三〇 |
木下商会産報会 | 木下連作 | 〃 〃 四ノ一七 |
日本電球工組合連合会産報会 | 清水茂夫 | 〃 〃 五ノ四六 |
日本自動車工業株式会社産報会 | 神戸利八 | 〃 〃 四ノ八 |
栄養化学工業株式会社産報会 | 鈴木亨三 | 〃 〃 四ノ二五 |
品川運輸産報会 | 戸谷富佐雄 | 〃 〃 四ノ一三 |
大正製作株式会社産報会 | 計見正治 | 〃 南品川四ノ五〇五 |
日本ペイント株式会社産報会 | 秋山安蔵 | 〃 〃 四ノ六〇〇 |
扶桑電球株式会社産報会 | 林道雄 | 〃 〃 五ノ六七 |
宮寺石綿理化工業株式会社産報会 | 官寺良寛 | 〃 〃 五ノ二四 |
南品川一丁目産報会 | 相川常松 | 〃 〃 一ノ二四四 |
南品川三丁目 〃 | 千代三次 | 〃 〃 三ノ一四九 |
南品川四丁目 〃 | 中村菊太郎 | 〃 〃 四ノ五〇七 |
三菱鉱業研究所大井分会産報会 | 岡本正常 | 〃 〃 六ノ一二七二 |
東洋製菓株式会社産報会 | 長谷川亀楽 | 〃 北品川四ノ七四六 |
菅原電気産報会 | 菅原卓 | 品川区北品川五ノ四八二 |
金剛産報会 | 屋代勝 | 〃 〃 一ノ一二〇 |
東京工作機製造株式会社産報会 | 井上弥三郎 | 〃 〃 四ノ五三一 |
小島印株式会社産報会 | 森江有三 | 〃 〃 四ノ六五五 |
日本夜光産報会 | 上田良武 | 〃 〃 四ノ七一五 |
日本光音 〃 | 山田英吉 | 〃 〃 四ノ五六四 |
中興電気 〃 | 神谷貞夫 | 〃 〃 五ノ四八七 |
大東電気 〃 | 東条虎輔 | 〃 〃 四ノ五四四 |
帝国電気 〃 | 鈴木隆晴 | 〃 〃 四ノ五三六 |
鈴達電機製作所産報会 | 鈴木達雄 | 〃 〃 三ノ一九五 |
北品川第一産報会 | 小柳米一 | 〃 〃 三ノ二四一 |
小関産報会 | 山峯政治 | 〃 〃 四ノ六七四 |
袖ケ崎産報会 | 宮下祐次郎 | 〃 〃 五丁目 |
原注 (一) 名簿記入順序ハ単位産報会名、同会長氏名、所在地名ノ順。
(二)都合ニヨリ壱百名以下ノ会員ヲ有スルモノハ省略シタ。
しかし、挙国一致、聖戦遂行のたてまえの産業報国会のもとでも、労働者のたたかいの火は完全に圧殺することはできなかった。組織的ではなく散発的であったが、現品川区地域でも労働紛争が、しばしば起こった。
たとえば昭和十六年四月十一日、品川区大崎本町二ノ四二三の帝国合成工学株式会社で、新重役就任に不満をもつ会計課長が中心となり、労働者一七名全員が三日間のストライキが起こした。大崎警察署はただちに指導者二名を検挙した(昭和十六年五月六日警察・消防署長会議での特高部長口演)。
また、荏原製作所でも産業報国会のもとで紛争が起こったが、たちまち指導者は検挙された。しかし、その紛争に居合わせ、検挙されていく指導者の姿に、闘う人間の尊厳さをみた一少年工は、会社の役員や権力者たちの言っているのとは違う世界を直感した。かれは、結核に倒れて闘病生活のなかで敗戦を迎えた後、結核療養所の民主化闘争に立ち、都患同盟、日養同盟を組織していった。戦時中の産報という抑圧が、戦後の民主化闘争の火種をつけた一つの例であった(「小島貞雄氏談話速記録」)。