この時期における生活の変化を促した最大のものは、家庭電化製品の発達と普及である。昭和三十年には電気炊飯器が発売されたが、それ以前にすでに普及しつつあった電気洗濯機・ミキサー・テレビ・電気コタツ等とあいまって、日本全国が家庭電化の時代にはいった。とくに、月賦販売制度の発達によって、比較的所得の低い階層にまで家庭電化が及んだ。三十五年には、電気冷蔵庫の普及が加わり、テレビ・洗濯機とともに「三種の神器」とよばれた。
家庭の電化が、家事労働の省力化によって余暇をもたらし、それをみたすものとして、テレビが家庭の娯楽と教養の中心となった。テレビの普及がもたらす問題については後に触れるが、余暇利用に関係する雑誌の出版に関しては、月刊誌にかわって週刊誌の抬頭があげられる。このことは、生活のサイクルが、在来の月を単位とするものから週を単位とするものに変わったことを示している。
家庭生活のこのような変化は、家庭電化製品によって代表される耐久消費財の購入を中心として、消費ブームやレジャー=ブームを促進するものであった。自家用乗用車の増加によるモータリゼーションの進展も同じ現象であった。民間放送のラジオ・テレビをつうじて流れるコマーシャルは、消費者の購買力を刺戟し、それにデモンストレーション効果も加わって、豊かな消費生活を目標とする考え方が定着し、それとの関連から家庭生活最優先のマイホーム主義が一般化した。やがて「昭和元禄」とか「太平ムード」とよばれる状況は、このようにしてつくりだされていったのである。