テレビの普及がおよぼした影響のうち、具体的な形で示すことのできるのは、映画の衰退である。テレビの普及率と映画観覧回数(一年に何回映画を観たか)とを対比させた第199図からも明らかなように、映画観覧回数は三十三年の一人年間一二、三回を頂点として、テレビ普及率の上昇とは逆に、急激に下降線をたどっている。
映画観覧回数の低下は、当然映画観客数の減少を意味する。そのことが映画館の経営難をひき起こすことは当然である。区内のさかり場に復興し、新設された映画館は、このような事情から衰微をよぎなくされた。一部には経営難の打開策として、映画と抱合わせにストリップ=ショウを上演するものもあり、ストリップ専門劇場に転向するものもあった。三十九年七月以来、区内戸越銀座に起こったストリップ劇場反対住民運動も、その背後に急速なテレビ普及という事情があったのである(資五二七~五二九号)。