昭和三十四年十一月、品川区青少年問題研究大会において、日本光学社宅団地東光荘の「あけぼの子供会」が区内一の優良子供会として区長表彰を受けた。「社宅街に育つ〝あけぼの子供会〟」というみだしでこのことを報道した『読売新聞』(昭和三十四年十一月二十三日)には、次のように記されている。
品川区南品川六の一四九一の高台住宅地に東光荘という五むねの社宅がある。日本光学の従業員とその家族八九世帯が入っている。この一角を舞台として東光荘〝あけぼの子供会〟が発足しのは二十五年二月だった。社宅や寮での交際はむずかしい。子供のケンカに親が飛び出したり、職場における上下の差が家庭にまで持ちこまれる。こんなふんい気は子供の心にもひびいて、いじけた子供ができたりするものだ。公務員住宅、公団住宅などに見られる共通の悩みの一つだ。
あけぼの自治会の現会長伊波寛裕さん(四六)や同会文化部長河内佐吉さん(四四)もこうした共通の悩みに苦しんだので、この打開策として明るい子供会をつくろうと思いたった。子供会をつくってみると〝子供をかわいがらぬ親はない〟というコトワザ通り、周囲のお母さん方もしだいにめざめ、ついには子供会の世話を通して大人の社会まで明るくなり、社宅内の集団生活上の悩みなどはほとんど消し飛んでしまったという。
団地生活をめぐる悩みや問題を、このような活動をつうじて解決していこうとする地域の住民運動が活発に展開されていくのも、区民の新らしい生活パターンの形成に付随した現象にほかならないのである。