(6) 品川宿の住民

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 天保十四年(一八四三)の調査によると、品川宿の人口は六、八九〇人で、うち男が三、二七二人、女が三、六一八人である(この中には町奉行支配の寺社門前地の人口は含まれていない。)。女性の数の方が多いのは食売女が多くいたためであったと考えられる。

 宿の住民は本来の身分は農民で、耕地も持っていたが、自分ではほとんど耕作せず小作に出し、農間稼ぎと称して専ら商売に精を出していた。天保九年(一八三八)の調査によると、品川宿の家数一、三六七軒のうち専業農家はわずか二八軒にすぎなかった。第7表は天保十四年における宿内の職人・商人の業種別人数を示したものである。旅籠屋・水茶屋や、夜具・蒲団の賃貸を業とする損料屋など宿場町に特有の商売の外、生活必需品を商う商人も舂米(つきごめ)屋をはじめ、酒屋・八百屋・肴(さかな)屋・菓子屋・豆腐屋・荒物屋・薬屋・炭屋と多彩で、寿司屋・蕎麦(そば)屋・うなぎ屋・煙草屋まで揃っていた。彼らはこれらの職業につきながら、既述した通りの宿役を負担していたのである。

第7表 品川宿諸職人・商人の人数(天保14年)
職人 商人
大工職 46 酒酢味噌醤油塩油渡世 32
経師 3 洗湯屋 8
左官 14 薬種屋 7
木地物師 1 荒物屋 59
家根葺 9 舂米屋 25
畳職 2 小間物屋 8
桶職 10 呉服屋 2
仏師 1 古着古鉄古道具渡世 64
建具職 7 質屋 40
瓦師 1 炭薪 16
木具師 3 薬湯 2
鍛冶職 2 足洗湯 1
石工 3 鮨渡世 9
錺師 3 蒲焼屋 5
船大工 2 豆腐屋 8
塗師 1 瀬戸物屋 2
染物師 1 乾物屋 1
縫箔 1 挑灯屋 3
仕立職 5 紺屋 2
三弦師 1 損料屋 8
髪結 12 蝋燭水油屋 12
煮売渡世 44
煙草屋 9
餅菓子屋 16
鉄物屋 2
肴商人 17
八百屋 15
平旅籠屋 19
蕎麦屋 9
水茶屋 64
食売旅籠屋 92