大井町の大工場で働き、同町に住んでいる一職工の生活記録でみると、工場内労働時間毎日一〇時間、たまには石油で顔を洗わねばならないほど油で真黒になる。それでも生活は楽になるどころか、住宅事情も深刻だった。大正期のこの職工の家計は、エンゲル係数で照らしてみると、全支出の中に占める飯食物費の割合は四〇・五%だから、かろうじて生活が維持されている水準に過ぎなかったのである(第15表)。
項目 | 金額 |
---|---|
円 銭 | |
収入 | 31.85 |
工賃 | 25.48 |
戦争手当 | 6.37 |
支出 | 31.85 |
(1) 飲食物費 | 12.90 |
米 | 8.18 |
魚肉・野採 | 2.02 |
塩・味噌・醤油・砂糖 | 1.30 |
茶・菓子 | 0.50 |
酒・タバコ | 0.90 |
(2) 住宅費 | 5.55 |
家賃 | 5.00 |
井戸代 | 0.05 |
家具 | 0.50 |
(3) 光熱費 | 2.45 |
電灯代 | 0.45 |
燃料費 | 2.00 |
(4) 被服・身廻品費 | 3.80 |
被服 | 2.50 |
装身 | 1.30 |
(5) 保健費 | 1.00 |
(6) 交通・通信費 | 1.00 |
(7) 会費・寄付金・衛生費 | 0.16 |
(8) 交際費 | 1.20 |
(9) 教養費 | 0.74 |
(10) 雑費 | 1.05 |
(1)~(10)の消費支出計 | 29.85 |
貯金 | 2.00 |