著者

 本書は、天保14年(1843)に脱稿し、下絵のままのものは改めて依頼して精画とし、嘉永元年(1848)に校閲を得て、嘉永2年9月に美濃屋伊七によって上梓されました。名古屋で書店を開いていた美濃屋伊六は、『尾張名所図会』発行書店の一つです。
 著者は豊田利忠です。108点の挿絵の大半も彼が描いています。利忠は、別名を庸園と号し、美濃国今尾藩(岐阜県海津市)の城主竹腰氏の家臣です。家臣としての公務の合間に本書を執筆したといいます。
 利忠が本書の構想を思い立ったのは天保初年のことです。それから10数年の歳月を費して書かれました。古来の名所にとどまらず、その周辺に広がる風景や生業を描き、また、100種類以上の古来からの文献が引用されています。