「松本繁昌記」の緒言によれば、長尾無墨が『善光寺繁昌記』を記したが、松本の繁昌は信濃国一番であり、いまだにこれを記したものがないので、本書をだすことになったとしています。本文に女鳥羽川に架かる千歳橋の賑わいや初市の賑わいなどの挿画がいくつかありますが、描いたのは高木本枝であると緒言に書かれています。この人物についてはくわしいことはわかりません。
本書の奥付によると、明治16年(1883)9月1日に出版届をし、同年12月1日に「新刻出版」となっています。編輯人が、松本北深志町の
関口友愛と
浅井洌、出版人は松本南深志町の高美甚左衛門です。
出版人の高美甚左衛門らが長野県の県令(今の県知事)に提出した出版の願書と、明治政府に提出した出版届は、次のとおりです。
出版御届書
御願書
別紙松本繁昌記出版御届書一通其筋エ御進達奉願候也
明治十六年九月一日
東筑摩郡南深志町二百七十六番地□□ 出版人 高美甚左衛門(印)
東筑摩郡南深志町戸長 近藤速水(印)
長野県令
大野誠殿
出版御届
関口友愛・
浅井洌交著
一、 松本繁昌記 半紙本初篇全二冊
明治十六年九月出版
右者、
関口友愛・
浅井洌交著、松本市街ノ景況ヲ記載シ、間々図画ヲ挿入セシモノニテ一切条例ニ背キ候儀無之候間、今度示談之上出版致度、依テ草稿相添エ此段御届申上候也
明治十六年九月一日
編輯人 長野県平民
関口友愛(印)
同県東筑摩郡北深志町四百六十五番地
同上 同
浅井 洌(印)
同上
同 □□
出版人 高美甚左衛門(印)
同上南深志町三百七十六番地
内務卿 山田顕義殿