[解説]

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開化商売往来(全)
開化商売往来(全)

長野郷土史研究会会長 小林一郎

『開化商売往来』という名称

手習いの手本として寺子屋などで使われた教科書が、往来物です。商売に使う用語などを集めた『商売往来』は、『○○商売往来』といった書名で江戸時代から何種類もありました。明治時代になると、文明開化の時代を意識した『開化商売往来』というものが、何種も登場しました。『日本教科書大系 往来編』第13巻の「産業科往来系譜」には、『開化商売往来』という名称の往来物が12種も挙げられていています。これらは明治6年(1873)から明治21年(1888)にかけて出版されたもので、当時はかなり一般的な名称だったことがわかります。この時代にはまた、『文明商売往来』、『改正商売往来』、『新撰商売往来』、『新編商売往来』、『開化普通商売往来』といった名称の類書もありました。

花月文庫の『開化商売往来』

この花月文庫の『開化商売往来』は、末尾に所蔵者名が書かれていますが、奥付はありません。しかし国立国会図書館のデジタルコレクションを参照すると、この本は明治20年(1887)に東京の米山栄吉によって出版された『開化商売往来』と同版であることがわかります。この奥付には、次のように書かれています。

明治二十年二月一日御届

同  年二月出版    定価五戔

編輯兼出版人 東京府平民 米山栄吉(住所略)

売捌人  同    吉田桂之助(住所略)

花月文庫の『開化商売往来』の内容

この『開化商売往来』は、全文に振り仮名が付けられているのが特徴です。内容は、帳面類、金銭、呉服、衣服、食物、家屋、日用品、農具、大工道具、野菜、紙、魚などに分類されて、名称が記されています。「金銀銅貨、楮幣(紙幣)、洋銀」といった語に、明治時代の新しい商業活動を見ることができます。また、ズボン(大褲)、チョッキ(背心)、シャツ(肌着)といった語が、それぞれ漢字で書かれているのも興味深いことです。