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傾城買四十八手
傾城買四十八手

翻刻

上田市市民ICT推進センター(iプラザうえだ) 井戸芳之

山東京伝作・画の洒落本。

寛政2年(1790年)蔦屋重三郎刊。

作者の山東京伝は1700年代末から1800年代初めの、黄表紙・洒落本の代表的作者である。

 

タイトルの「傾城」は、中国の故事を基にした「城を傾けるほどの美女」の意味が転じて、遊女・女郎を指す言葉となった。

「四十八手」は、相撲の決まり手の意味が転じて、多彩な技・手練手管を表す。

これを総合してタイトルの「傾城買四十八手」は、「女郎を買う(=女郎遊び)のあれこれ」といった意味。

 

本書は五章構成で、それぞれの章は、遊郭の女郎と客とのやり取りが会話文で描かれ、その後に作者の京伝による「評」が付いている。

 

例えば、第1章の「しつぽりとした手」は、この春に店に出たばかりの女郎と、通い慣れていない若い男の客との初会を描く。

互いに「好きな人はいるのか?」と探り合う様子が、初々しくも艶っぽい。

 

これに対する京伝の「評」は、「今どきの若い客は洒落たがるものだが、この客にはそれがなく、女郎に好かれる風情がある。

二人のやり取りは誠に羨ましい」と褒めている。

 

また、第5章の「真の手」は、大店の中堅格の女郎と、苦みばしった色男の客を描く。

「いずれは正妻に」という深い仲。

話を先伸ばしする客に女郎は「駆け落ちの覚悟がある。

命までは売らないけれど」と言う。

「命は売らない」に却って本気を感じる。

 

これに対する京伝の「評」は、「女郎に真の愛が芽生えては運の尽き」とし、待っているのは互いの破滅だと、誠に手厳しい。

しかし、外から見れば馬鹿らしくても、当人たちにはもっともな理屈があるのだと、愚かさへの愛惜もにじませる。

 

他の章も含めて、女郎と客の各者各様の関係が、時に軽妙に時にしっとりと描かれていて面白い。

さらに、暗喩がふんだんに含まれており、例えば「火鉢の火」が恋情を、「三味線の糸」が男女の関係を、鐘や楽器の音が場面転換や物事の終わりを表す。

そういったことを含んで読めば、より一層面白い。