何を笑ふぞ遠近の山
我に事足る竹の一滴
降に究めて蓑を着て行
ウ
まんまと甥の所化を取立
小刀にさへ切鍛冶は有り
浴衣を掛し爰の透垣
木履取らるゝ夜の冬瓜
師(ス)兄(ヒン)と成つて元来が色
(改頁)
山明の瀬の不断震ル梁
名
舞台の上も茶の湯成らん
羽織の数も此ごろの医者
涼み戻りも近付の馬
御殿の瑾は遠い雪隠
月氷り行棒松の上
光琳染に美しい𤾣(白ヘン=黴)
ウ
目付の役は目を付ぬ役
功(勲)一等の定たばこ入
(改頁)
蝶も遊びの風心よき
春の部
梅
(改頁)
歌仙
草履の数に痩るさわらび
養ひ君の便りほしさよ
障子の破れを塞ぐ菊形
ウ
松嶋や見ん橋だてや見む
小褸ほつぼつ思ひあり顔
幟の裾ににぎやかな浪
三ケ月はやき牛込の坂
冬の近さに袖も留たか
(改頁)
此永い日に鐘を算へる
ナ
尼が崎から聟も取る筈
涼しく眠る物干の猫
六角堂は日向なりけり
鴻真来ならばをれも取たい
月の路次からお端女の声
寝るに費な履ものゝ世話
ナウ
江戸の伯父にはすこし恨も
録のあるので抜井戸も出来
(改頁)
飼鶯の耳へうれしき
表八章
御秡麻箱へふたふたと鳥
男鈶を待ておもしろく汲ム
あらことごとし饅頭に汁
稲の香に狐たゝく戸
柳
野花黄蝶頷春風
(改頁) (二十六丁は欠。早稲田大学図書館本
によって補う)
春風三月曽閑ならず。右隣繁花の勝地より
観音の甍斜に東叡の霊閣誠に堆し
(改頁)
春遊
大道紅楼日已斜
柳辺風起送飛花
(改頁)
仝(同)
夏之部
更衣
享保十九年の初夏家の
業を子なるものにゆづりて
(貼紙):梅が香や隣は荻生惣右衛門
其角ノ句ニアラズ 珪琳の句ナリト
松宇の談ナリ
郭公
(改頁)
千重百重咲みだれたるを壷中にさしたれば
歌仙
舞して帰る猿に実ざくら
影やはらかに更るあぶら火
墨する袖にうそ寒き風
ウ
だて茶定て朝は三ぷく
(改頁)
日陰/\をすいかづら売
暖簾に髪の心もとなき
露の身じやとて金は有げな
娵も姑も石臼を挽ク
鮒の鱠もわすられぬ京
ナ
またつかはるゝ少僧都也
先ヅ上は書を見れば急用
後には奥のさめし大雪
され共篦は利た牢人
(改頁)
先キ荷はもはや豊後橋迄
おもて/\と落る桐の葉
ナウ
坊主はしよりは下手そうな医者
あんまりはやく落て二の足
長い堤もあかずたんぽゝ
仝(同)
黄色な麦へちつとづゝ照る
居眠る側のそれも芸者ぞ
隣へたんとしだれたる柿
ウ
(改頁)
繋で見れば大キなる犬
おもひもとげずとしを取ル足
絵でも欠をしたる白張
また客僧の池を見て居ル
昨日の南そこらうち花
彼岸の空は仏法の空
ナ
貞女の噂聞もすさまじ
髭ぬき鏡見てはいやがる
朝はればれと拝む日の脚
(改頁)
よう笑はせる座頭では有ル
明地の蓼穂かなぐつて来る
面白さうに寝て見たる馬
ウ
手で盛て出す冷し蕎麦切
三人よればふたり仁斎
とくより起てうごき摘ばや
松魚
あるじの留守に薗へまかりて
(改頁)
田植
浅草の富士
秋之部
(改頁)
色鳥
名月
実陰卿の詠歌を折からおもひ出て
一句両弁 上八字一意/下七五言一意
(改頁)
冬之部
雪
除夜雨
歌仙 一集の満尾を寿て
世をすぐ(直)に漕水仙の咲
(改頁)
我書たれど読かねて問
目をうちさます木兎の顔
ウ
都の残る奈良の勿躰
わるい女はわるいとて見る
袖かき合せ居ばる祝子
栄螺の沖も年による波
あれば有もの髭の出替り
月見るまではさても遅い日
名
外方な上によろづ不器用
(改頁)
鯖のさしみも光る振舞
雪の落馬の数も有増
つくづくみればすりこ木の眉
竜眼聞も十三夜もの
芭蕉でもなくずいきでもなし
ウ
鼓が瀧へ右の肩出す
鶴日和かな老のさいわい
木の芽もはると云ふよしぞかし