亡師白雄居士の須陀円忌を虎杖庵にまツらるゝに鮫洲法会にしておりからそこにいたらずながら主の労あるじの功感ずる夕慈氏を飜すの意にも叶ふべけれ。年暮年明てその国に入、其庵に筆をとる。
中/\にわれはおろかよ二木季鳥
春秋庵碩布(印)
(改頁)
行先もまた行さきも旅にしてつひに鴫たツ沢に一箇の古饅頭を積一河葛三と呼れてはや七とせの星霜を経ぬ。こゝに風流結縁のため小集をものして其年忌をとぶらへる八朗の厚志豈うけざらめやは、師弟のちなみはワれもいかでかと供に拈香九拝して鴫たツ庵雉啄しるす
(改頁)
如意宝珠とはいかなるものぞとあるひとにとへば心珠とて一点の塵もなき真ごゝろをいふ也と云り。甘い真実なる心より父の追福を営ミつるいまの乕杖庵其結縁につきて梨翁の風徳をとりはやせし今の小蓑庵ミなちりなき真心よりいでたるいさをしなれば我また何をか云ん。かの如意宝珠は八方の龍女がミほとけのミまへにたてまツりにし珠なれば史のしりへに記して流通の綺語をさゝぐといふ。
文政甲申の水無月庵主乕杖の需るにまかせ善光精舎の仏のミまへに追善の念珠敬礼したび硯を浄めて書て戸倉の庵に贈る。
鷦巣閑人獲物(印)
(改頁)
昨日見し人ハと問へバけふハなし。明日我我身を誰か尋ん。明日我身を誰か尋む。行水の流とゞまらず世をさり給ふ虎杖の翁をや問るゝも老とふも又老なり。
信濃路の便りハ夢と月見哉
応々
噞印
本師如来
牛王
川中島の一ざとに社友あり。梨翁庵をむすびし時は風交怠らざりしに翁没して後も忌日の折/\かハる/″\し光寺詣してある日法印文の紙さづかりしを墓にをさめよとておくらる。是を又とものすゝめにまかせて冊子にのす。