軒の山より若葉ふく風
〔あやめ草の青きに又若葉の色をそへたるは植物の手柄うすかるべき也〕
待ほどもなく舟はつきけり
餉(カレイヽ)を見てなれ啼か鷺からす
むら竹は月のためにもたハミしか
垣をへだてゝ虫のさま/゛\
〔鳥と虫二句去りにて嫌ふべきにもあらねど何れも鳴さまあれば表の見倒しおかしかるまじくや〕
(改頁)
〔打こしの変化今少し。残念〕(印①)
〔鳥と鳥の啼は七句去りなれど表裏とかハりたれば苦かるまじ〕
かり着はかなく残る移り香
つれ/゛\の数に夕を松植て
菩薩にきりし利根川の石
(改頁)
村長の酒癖わるき月一夜
繕いて作るもよしやふくべ垣
〔利根川の玉句より四句続て鄙めきし躰にてハ残念〕
世の中よ心/\(ママ)に華も見て
紙衣羽織の春をたゝませ
〔玉句老の姿ありて打こしいかゞならんか〕
夕げしき出代馴て窓覗(ノゾ)き
〔打こし見てとあり、覗とハ嫌ふべきや〕
(改頁)
〔前句の放下左右へ引張つけなるべし〕
埋火を千首の太輔くツろぎて
朝ぼらけ鱈つり船の帰るとて
狸の宮を造りかへたり
悪太郎迯し庄屋が咳払
〔帰るも迯しも歩行の躰ならんか。勿論迯しは過去ながら〕
盗ミのこりの瞿麦(ナデシコ)に露
〔悪太郎に盗とはあまりしたしからんや〕
(改頁)
妓王寺のかねも幽(カスカ)に夕間ぐれ
〔夕見渡しにあり。近し〕
君が代や人うるハしき月の秋
ニウ
銅の鳥井に抱ついて見る
あられうちけす衭挑灯
(改頁)
〔打こし琴の音の玉句なるべし。下駄の音少し残念〕
こんにゃく(蒟蒻)踏ミに京へやとわれ
いにしへはせなも手児女も歌よミて
児なれし鳩に餌を蒔てやる
蟷螂の人中へ出てなぶらるゝ
太鼓ハ空にひゞく普請場
〔家にも(普)請にはあるまじ。宮寺の普請ならんか。何とやら御句の仕立川除道橋などの普請と聞へて打こしのがれ兼候にや〕
(改頁)
海づらも花よりかゝる山かづら
〔水辺三句去りなり。一句近し〕
向ひあひたる雉子の□り毛
三ウ
あれが常の笠置の解脱霞ミ行
〔山かつらは暁の空なり。雲も霞も聳ものなれば打こしては悪し〕
茶の水汲にはづす窓ぶた
〔聳物と降ものは二句去りなり。打こしいかゞなれど〕
〔琴は百韻にひとツなれど琴箱とハ苦しかるまじきか〕
夜明おろしは山里の癖
〔博多地名なり。里と打越いかゞならん〕
(改頁)
〔田舎の躰打こし残念〕
〔これ迄四句鄙めきたれど〕
富士も築(ママ)波も眼の先にあり
釣舟の妙な所へふかれ出て
夕めし頃を碁に負けてたつ
木履の緒きれたうしろに月のさす
砂にまぶれて雁のはらばふ
(改頁)
三ウ
焚ものに案山子もなるか秋の果(はて)
〔雁に案山子とは好ましくや〕
何として棚から落し絵具皿
〔茶の湯と画と例の引さき附(ママ)ならんか〕
天窓(あたま)の長き例の狂歌師
飼猿が酌の禿(かむろ)とたハれごと
〔狂哥をたハれ哥ともいへばたハれ言とはおかしからず〕
おもひやらるゝ翌(あす)のきぬ/゛\
(改頁)
零餘子(むかご)汁すふ秋のはツ物
蛼(こおろぎ)がはやらぬ医師に飛つひて
嘘つき上手上坐するなり
〔壁も座も居所なり。三句去るべし〕
ナヲ
親しらず子知らず春の波越へて
追人ふたりが競ふ辻占
(改頁)
門鉢を息つきあへず心太
〔御前句辻占一句の御作意ともに恋になるべきや。占は恋のあつかひありたし〕
筥崎にちかひを結ぶいわた帯
〔打こし恋にならばいわた帯はいかゞならん〕
主殿之助は簾隔て
大さかヅきにうつる満月
山にからむ蔦のほそ道
(改頁)
松かさハ焚さすなりに燃しさり
〔一句の淋しミ打こしにいかゞあらん〕
あるじといふももろ白髪なり
〔諸白髪は恋なり。端の句に恋を出せるは好まず〕
ナウ
鮓の名も一夜とかわる頃なれや
〔打こし味ひとあれば食類打こし遠慮ありたし〕
琵琶に鼾もひゞくうたゝ寝
〔打こし蝉の声ながら鼾のひゞくも声あればおかしからず〕
(改頁)
鶏卵のからに風暮る也
〔風に花の散るとの御附(ママ)はハいかゞなるべし。又数字一句狭(ママ)ミも見渡しおかしからねど〕
枕にすべく萌るもゝくさ
鳳玉濃
(改頁)
※註・点帖には、巻中第一の付句を末尾に記す作法があった。この句は争茂の作で3枚目の裏2句目に見える。