昔、信州小県郡という所に、強欲で無信心なお婆さんがいました。
ある日のこと。千曲川で洗濯をしていると何処からか牛が一頭現れて、その角に洗濯していた布を引っかけ、走り去ってしまったではありませんか。
「待てー!わしの布を返せ!」
お婆さんはたいそう腹を立てて、布を取り戻そうと牛を追いかけていきました。
ところが牛の逃げ足が速く、なかなか追いつけません。
どんどん、どんどん、牛は走っていきます。
牛を追いかけていくうちに、お婆さんはとうとう善光寺まで来ていました。
追いかけていた牛は、吸い込まれるように善光寺の中に消えていきました。
日も沈んでしまい、疲れ果てたお婆さんは、本堂に入り込んで寝てしまいました。
ふいに明るい光に照らされて、おばあさんは目を覚ましました。
すると、追いかけてきた牛がどこからともなく現れたかと思うと…
一条の光明がさし、善光寺如来様となったではありませんか。
お婆さんは自分を善光寺に導いてくださった如来様に感謝し、その後は信心深く周囲の人々に優しく接して過ごしました。