外部は素木(しらき)で、華やかな意匠ではない。屋根の側面にある三角部分を妻飾(つまかざり)と呼ぶが、ここには唐獅子(からじし)と牡丹の大きな彫刻が取付けられている。唐獅子のルーツは百獣の王ライオンで、牡丹は百花の長である。
正面の玄関口である向拝に近づくと、この周辺にのみ彫刻が付いている事に気が付く。向拝の柱の上方には、中央に龍(自由に天空を飛翔して雨を呼ぶ。仏法の守護)、左右に麒麟(一日に千里を駆ける。仁徳を具える) の彫刻が付いている。両者は霊獣の双璧であるが、勝興寺の山号(さんごう)は雲龍山なので、龍の彫刻を玄関口の中央に配したのであろう。又、柱の両端に突出している立体的な彫刻は、獏(悪い夢を食べる。平和の象徴)である。向拝内に入ると、見返しに鳳凰(ほうおう)(徳篤い君主の兆し)や鶴(長寿の象徴)などの花鳥の彫刻が取付いており、これらは欅(けやき)の一木から彫り出しか巧緻なものである。この他、左右に象(仏法の守護)と唐獅子の立体的な彫刻も見られる。この様に、吉祥の彫刻を豊富に散りばめて善美を尽くしている。
一方、本体側には彫刻は無く、柱の上部を繋ぐS字形の海老虹梁(えびこうりょう)と、柱上の組物(くみもの)(斗栱(ときょう)とも呼び、積木細工状のもの)で賑やかに飾っている事が見て取れる。組物の木口(こぐち)には、白い胡粉塗(ごふんぬり)の塗装を施して、一層美しく輪郭を際立たせている。この様に、彫刻の取付く向拝との対比が、効果的に表現されている点が特徴的と言えよう。
尚、外壁の上方に鳥獣の彫刻が付いているが、明治時代に井波で活躍した松永正行の名前が裏面に記されており、建立当初には無かったものである。