内部の特徴

 内部は先ず、正面側の外陣(げじん)と奥の内陣(ないじん)側とに二分される。外陣には瞠目の大空間が拡がり、正面側三分の二は一般参拝者の場、奥の三分の一は僧侶の場(矢来(やらい)と呼ぶ)で、結界(けっかい)の木柵で区切られている。この外陣の内部には柱が四本しか建っておらず、太く長い虹梁(こうりょう)を上方に架けて柱を省略している。参拝の場を大きく広くとる真宗本堂の本質がこの外陣に明確に現れている。
 外陣は、柱などが全て素木(しらき)で、木目が見えている。一方、内陣側は、金箔が貼られ、黒漆塗も施されている。欄間には大きな牡丹の彫刻が並び、更に上方には天女が楽器を持って雅楽を奏でている彫刻が取付いている。その周囲には赤・青・緑・金色など種々の絵具や金箔で彩られる彩色(さいしき)が華やかに施され、さらに金色に輝く錺金具(かざりかなぐ)が随所に散りばめられている。
 中央の内陣は、御本尊の阿弥陀如来を安置する最も重要な部屋である。床を一番高く張り、黒と朱色の漆塗を施しか須弥壇(しゅみだん)を中央に設え、その上に金箔貼の宮殿(くうでん)(明治四十四年に造替えたもの)を据えて、その中に阿弥陀如来立像を安置している。天井は周囲より一段高くする折上格天井(おりあげごうてんじょう)とし、十六弁の菊花(頌徳上皇の勅願所を継承した為)を描いている。この内陣は、まさしく阿弥陀如来の極楽浄土を具現化している事が明らかに看取できる。素木とする外陣の人の世界と、荘厳(しょうごん)化した内陣の仏の世界とを峻別する、真宗本堂の典型を見る事が出来よう。尚、彩色(さいしき)の絵具は二百年の時を経て、変色と褪色が大分生じているので、建立当初にはもっと色鮮やかで華麗な空間であった。
 又、内陣向かって右奥の仏壇には、厨子(ずし)(明治四十四年の造替え)を据え置き、浄土真宗の御開祖親鸞聖人の画像を掛けているが、本堂よりも古い慶長十六年(一六一二の年号が裏書されている。
 内陣左右の部屋は、余間(よま)と呼んでおり、建立当初には十字名号「帰命尽十方無碍光如来(きみょうじんじっぽうむげこうみょらい)」、九字名号「南無不可思議光如来(なむふかしぎこうにょらい)」を記した軸を掛けていた事も、今回の調査で判明した。