解説

 勝興寺には漆工芸、金属工芸、陶磁工芸、木工芸など、百点を超える工藝品が所蔵されている。新しい発見もあり、現在調査中のものもあるが、史的価値の高いもの二八点が、昭和五十年[一九七五]九月、富山県の文化財[歴史資料]に指定された。同寺所蔵の工芸品は、主として婚礼調度と拝領品、奉納品及び勝興寺自身の什器で、中でも豪華な佳品が多いのは婚礼調度である。勝興寺は普通の寺院と違い、戦国時代には一向一揆の旗頭として石黒、神保、朝倉、武田、上杉、織田ら戦国大名や、佐々、柴田、羽柴、前田ら織田方の武将と和戦を繰り返し、江戸時代には加賀の前田家や、京都の本願寺、三条、四辻、鷹司家など、大名、真宗本山、公家などと姻戚関係を結び、加賀前田藩から配下大名のような待遇を受けていた。
 戦乱に明け暮れる戦国時代はもちろん、桃山、江戸時代でも大名、公家間の縁組や交際は、政略や戦略の手段であることが多かったから、婚礼調度や拝領品は、美術工芸品であると同時に、波乱に満ちた世相や勝興寺の来歴を物語る史料でもある。