勝興寺は約三万平方メートルの広大な境内に江戸時代の建物が十二棟も現存しており、近世真宗寺院の典型的伽藍配置を示すことから、昭和六十三年に本堂、唐門、平成七年には総門、鼓堂、経堂、御霊屋、宝蔵、式台門、大広間及び式台、台所、書院及び奥書院、御内仏が重要文化財に指定された。
これらの伽藍は明治の修理から一〇〇年以上を経過し、建物の損傷・破損も激しく、文化庁の補助事業として平成十年度から工期二十ヵ年計画で保存修理事業が実施されている。
第Ⅰ期事業は、平成十年度より約七年をかけて本堂の保存修理が実施され、現在本堂は寛政七年(一七九五)の姿に復原され、見事な威容を誇っている。
また、第Ⅱ期事業は、平成十七年度から実施されている。現在保存修理が実施されている本坊(大広間及び式台、書院及び奥書院、台所、御内仏)の建物は、幾度となく増改築が行われてきたため復原調査は難航していた。そして、文化庁の調査官から復原調査のための文書調査の必要性を指摘されていた。また、解体作業の過程で襖や壁の下張りに多量の古文書が使用されていることが判明したのである。
これらのことが契機となりこの下張り文書の調査をとおし、本坊の増改築の経歴を明らかにし、修理事業の円滑な推進を図るため、文書調査に踏み切ることになった。