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解題・説明
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鈴木松年は、明治時代の日本画家である。弟子に上村松園らがいる。曾我蕭白に私淑し、その作風には多大な影響を受けている。 画面いっぱいに描かれたこの達磨は、大きな体をはみ出さんばかりに押し迫ってくるようで、異様な迫力がある。衣の太い輪郭線は、筆以外の道具を嫌った松年が、何本も筆を束ねて独自に作成したものを使ったのだろう。非常に強く、はっきりとした筆致で、達磨の威圧感を更に際立たせている。それに対して、達磨の顔はひどく赤く、口元から白い歯が覗き、その目付きもどこか心許ない。その理由は、墨書「不倒々々酔不倒」からも想像できる。 禅宗の祖師である達磨の威厳を確かな画力で表現しながら、松年独自の感性とこだわり、豪放な筆遣いを存分に発揮した見応えのある作品である。
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