秀村選三
田中直樹
本年表は1830(天保元)年より1968(昭和43)年にいたる筑豊石炭礦業史の年表で,これに関連して全国の石炭事情と,筑豊地域社会の歴史とを対照して考察できるよう配慮して編纂されたものである.
実にこの1世紀半の間における筑豊石炭礦業の形成・展開・発展・衰退・崩壊は他のいかなる産業史にも見られないほどドラスティックなものであった.ここに,その全過程を年表として再現,表示し,歴史の真実を探ろうとするのは,懐古趣味や郷愁からではなく,また,たんなる学問的関心にもとづくものでもない.ましてや,現実の歴史過程を肯定・容認し,石炭礦業への挽歌を奏で,墓碑銘を刻むことに終始するのでもない.むしろ,石炭礦業の無惨な崩壊に対する一つの抗議であり,日本の近・現代にとって石炭とは一体何であったのか,筑豊地域社会にとって石炭礦業とはいかなる意味をもっていたのか,その歴史を直視して日本の産業社会の特質をうかがい,筑豊の過去を踏まえ将来を展望するため,その基礎資料を提供しようとするものである.