修験の道(香春の里山) 山伏さんの歩いた道Ⅱ

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【関連地域】香春町

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 香春は古来より、銅の産出や万葉集などその歴史・文化は深く、また時に傍若無人に振る舞う鳥獣たちと織りなす緑あふれる里山とともに、町民の誇りとする豊かな財産です。

 その豊かな里山の中で山伏が歩いた秋の峰入り道は、遠く福智山を発し連なる尾根道の焼立山(やきたてやま)から採銅所の金満山(かねみつやま)をへて、金辺(きべ)峠から龍ヶ鼻・金峰山・障子ヶ岳・大坂山、さらにその先英彦山へと続く修験の道です。

 この秋の峰入り道のうち焼立山から金満山に、人々が自然を味わい楽しむハイキングコースを拓ひらき整備しているボランティア団体の、香春・道草の会がコースを拓きました。

 このコースについて案内いたします。

 秋の峰入り道を通る金満山・焼立山コースは、採銅所駅から三〇分程北西へ歩いた鮎返(あゆがえり)から、こもれび渓谷を経て金満尾根に上がります。この尾根が峰入り道で、少し急な上り坂もありますが、シデやナラ・ダモなどの種々の広葉樹林が、下の谷川から湧き上がる清流の音とともに、峰入りする者の心身を浄めてくれるようです。金満山のピークを過ぎると、秋の高く澄み渡った青空をバックに紅葉が錦のグラデーションを織りなし、踏みしめて登って来たものを盛大に迎えてくれます。時期のタイミングもありますが思わず感嘆の声が出てくるところです。そして峰入り道の修験場両貝権現(両界宿)の岩場です。鋭い刃を並べたような尖(とが)った岩頭の谷側には山伏が修行を行ったと思われる小さな洞跡もあり、少し急斜面を降った谷川には大小幾つかの滝が水音を響かせています。そしてさらにアカガシ・ユズリハの大木を左右に見ながら灌木(かんぼく)林を登り上がると、福智山へ続く尾根に出て、このコースの目的地である焼立山に到着します。

紅葉した広葉樹林


 焼立山は田川市郡内からよく見える峰で眺望も良い場所です。田川はもちろん北九州・京築(けいちく)・嘉麻(かま)方面も見られ、英彦山や天気の良い日は遠く由布岳などを眺められます。

 山頂の自然を楽しんだ後、いよいよ下山開始です。さっき登って来た尾根道を戻ります。今度は金満尾根には入らず牛斬山(うしきりやま)方面へ降りますが最初の降りはやや急傾斜です。少し歩いて左側へ入り鮎返新道を降りて行きます。谷の沢沿いの登山道で滑らないよう気をつけて降ります。登り始めに渡ったこもれび橋を左に見て鮎返に出ればこのコースの終点です。ここ鮎返登山口には駐車場があり、5~6台置けますので利用できます。

 香春道草の会は最初に紹介したように、香春の里山に誰もが楽しめるハイキングコースを拓き整備している団体です。これまでに拓いたコースは今回の金満山コースのほか、愛宕(あたご)山、香春岳、牛斬山などです。そのほか障子ヶ岳や香春オルレのルート整備にも関わって来ました。

愛宕山頂のベンチで設置作業後のメンバー


 活動を開始してより既に十五年以上が経ちましたが、入れ替わりはあるもののほぼ当初メンバーが活躍し、さらに新しいメンバーも加わってきています。その一方でお互いの年齢も進んできており、身体のほうも嘗(かつ)ての動きを望むべくもあらず、活動も思うに任せない状況も出て来ました。とは言うものの、これらのコースを利用し喜んでいただいている皆さんが居ることがメンバーの大きな喜びであり、またお互いも山遊びを楽しみながら、無理のない気のおけない活動を続けたいと思っています。

 拓いたコースの案内をします。愛宕山コースは香春駅裏の湯山からタブ・シイなどの雑木林を登ります。春先は自生するヤマザクラが、その花とほのかな香りとともに山路の疲れを優しく癒してくれます。そしてヤブツバキの群生があるつばき台を経て、西山から頂きへと登り詰めます。この山の頂上はきれいな草地でベンチも設置し、過ごしやすい良い頂上だと自負しています。降りは香春の道の駅へつながる小富士山へ周回します。

 次に香春岳コースです。香春岳の裏側にある五徳峠から登り、ファミリーコースから林道を経てニノ岳・三ノ岳分岐へ上ります。三ノ岳へは登り始めに上級者向け直登コースもあります。ニノ岳には人枡(ひとます)遺跡や曲輪(くるわ)遺構もあり大小のドリーネもあります。田川を代表するような話題の多い山ですが、顧問をしていただいている元田川高校教師の熊谷信孝先生の指導を受けて、植生豊かなニノ岳平原に希少植物の保護育成にも取り組んでいます。

 牛斬山コースは同じく五徳峠から採銅所側へ少し降った円陣の滝公園から入ります。灌木林や杉植林を抜けて、一部林道を通りながら牛斬別れを経て、頂上へ一息の登りです。この山は比較的ポピュラーな山で眺望もよく、英彦山や周防灘も見ることができます。

 開発したコースの整備管理も継続しています。メンバーの平均年齢は累進していますが、引き続きできる範囲で山を楽しみながら頑張って行きたいと思っています。興味をお持ちの方は大歓迎いたしますのでご参加をお待ちしています。

(原田忠)

金峰山頂上の金峰山権現