神幸祭 Ⅱ 祭りに沸くふるさと(各地の祭り①)

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【関連地域】田川市 添田町 川崎町 大任町 福智町

彦山川流域(添田町・大任町・田川市・福智町)

 田川で最初に神幸祭(じんこうさい)が始まるのは英彦山神宮(写真①)です。この神幸祭は、本来、修験道の行事である「松会(まつえ)」のひとつでした。二日間にわたって三基の神輿(みこし)が往復し、稚児舞(ちごまい)・鉞舞(まさかりまい)・獅子舞も奉納されています。九月には高住神社の神幸祭もあります。落合地区と野田地区は獅子楽が有名で、野田神幸祭の野田獅子楽は、江戸時代に悪疫が流行した際に奉納したのが始まりといわれています。現在では加茂神社と野田の貴船神社で奉納され、子どもたちによる楽も奉納されます。

①英彦山神宮神幸祭


 大任町は、現在、町内で十数か所と田川地域では最も盛んに神幸祭が行われています。神幸祭の時期には、神輿や山笠が地域内を巡行し五穀豊穣の祈りが捧げられます。大行事秋永地区の貴船神社神幸祭(写真②)では、古くから「川渡り」が行われています。

②安永地区 貴船神社神幸祭


 田川市では、「川渡り神幸祭」(福岡県無形民俗文化財)(写真③)があります。風治八幡宮(ふうじはちまんぐう)(伊田)と白鳥神社(白鳥町)の神輿に従って、十一基もの幟山(のぼりやま)が彦山川に入り、水しぶきを上げて五穀豊穣・天下泰平を祈ります。幟山を前後に大きく傾ける豪快な「がぶり」の動きは圧巻です。「踊り山笠」では、子供達による踊りが奉納されます。これは、中津祇園(中津市)から伝わったと言われています。祭りでは上伊田西区の獅子舞が舞われます。糒や伊加利地区でも神輿や山笠の巡行が行われています。

③風治八幡宮・白鳥神社 川渡り神幸祭


 福智町の旧方城町で五月に行われる赤坂八幡社や白髪神社の神幸祭では、合戦絵巻を表した華麗な飾山笠が囃子の音色とともに練り歩きます。岩屋神社祇園祭の山笠の馬簾は白に統一され、他地域の山笠とは異なった雰囲気を醸し出しています。

 金田稲荷神社の神幸祭は十月中旬に行われ、飾山笠の巡行に獅子舞が華を添えます。夜の山笠競演会(写真④)では電飾に光が灯り会場を華麗に彩ります。この祭りには飯土井神社(いどいじんじゃ)(神崎地区)の山笠も参加します。

④金田稲荷神社神幸祭


中元寺川流域(添田町・川崎町・田川市)

 添田町下中元寺神幸祭の瀬成神社では奉納相撲(写真⑤)が行われ、添田神幸祭ではJR添田駅前に子供山笠が集結します。

⑤瀬成神社神幸祭 奉納相撲


 川崎町の神幸祭では多くの民俗芸能が奉納されます。安宅の神幸祭(安宅)の獅子舞は、別名「暴れ獅子」とも呼ばれる勇壮なものです。最近まで巨大な舁き山(かきやま)(写真⑥)が巡行し、その姿は圧巻でしたが、残念ながら現在休止しています。天降神社(あまふりじんじゃ)神幸祭(永井・大田・東川崎・町部)では山笠が地域の中心部を巡り、神輿の先導を五段・六調子の太田の獅子舞がおこない、後方につく曲獅子の永井・東川崎の獅子舞が囃し立てて祭りを盛り上げます。正八幡神社(田原)の神幸祭では、源為朝(みなもとのためとも)が奉納したとされる杖楽が有名です。大石神社神幸祭(池尻)では、社殿において浦安の舞が演じられ、五段・六調子の獅子舞が各所で舞われます。真崎では七月の祇園祭りで神輿や山笠の巡行が行われます。黒木の淡島神社や荒平の出雲神社では神事で五穀豊穣や家内安全が祈願されます。

⑥須佐神社 安宅神幸祭


 田川市後藤寺の春日神社の神幸祭では、筑前と豊前の演目が混じる岩戸神楽(国指定重要無形民俗文化財「豊前神楽」)が奉納され、行列には鬼も登場し、四月から始まった田川地域の神幸祭を締めくくる伝統のある祭りとなっています。また、弓削田・見立地区の神幸祭では獅子舞が奉納されます。

 位登八幡の神幸祭で舞われる獅子は、五段・六調子の獅子で、田川市西部の弓削田地区・見立地区や川崎町に分布する同様の獅子舞の発祥ではないかといわれています。足さばきに特徴がある舞が奉納されます。華やかな幟山笠が神輿に伴い御旅所へと続きます。白鳥神社(猪国)神幸祭では、夜に始まる神事で提灯山笠の巡行があり、獅子楽が奉納されます。

(長谷川清之)