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〝みくまり〟とは「水配り」の意味があり、山から流れ出る水が分かれる所です。北部九州の最高峰である英彦山はまさに〝みくまりの峰〟と言ってもいいでしょう。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)様のご長子をお祀りさせていただいている英彦山は、日本有数の霊山であるとともに、その雄大な裾野は福岡県はもとより大分県にも広がり、英彦山に降った恵みの雨は四方へ流れ下り、秋には黄金色の豊かな恵みを里にもたらします。
田川地方で神幸祭(じんこうさい)と言われる春祭りは、五穀豊穣を神様に祈願するお祭りです。このお祭りは、英彦山から豊かな水が流れ下るように、英彦山から下った神幸祭は村々で行われ、田川市の春日神社、風治八幡宮(ふうじはちまんぐう)の神幸が最後となり本格的な農耕シーズンとなります。
日本の古名を豊葦原水穂(とよあしはらみずほ)(瑞穂)国と言いますが、みくまりとともにとても美しい言葉であり、農業を生業とした日本ならではの美称と言えるでしょう。東方を尊い方角とする日本古来の神道は農業にとても関係深い宗教で、仏教伝来により新しい信仰が生まれる中においても、太陽、そして豊な水を尊いものとする考えはぶれることはありませんでした。
村々に水を流す地形的なもの、それに加え英彦山独特の宗教観が田川地方の独特な神幸祭の形態を生み出し、また裾野の各神社も英彦山に対する崇敬の念から、水が下るごとくの神幸祭が定着していったのではないでしょうか。
新年に行われる柱松は、松会の名の由来ともなる大柱を斎庭に立て、英彦山権現に万物成就を祈念するお祭りで、こののちお潮井採り、さらには御田祭と続き五穀豊穣を祈願する祭事は里へと下っていきます。
(高千穂秀敏)