最近は、健康志向や食の安全などの意識が高まり旧来の日本食が評価されています。それに加え、地域おこしなども影響して各地で手造りの食材や伝統料理が見直されているようですね。
田川でも山間に近い地域を中心として、手作りの食材や伝統料理が残っているようです。特に英彦山は古くから山岳信仰の霊山として知られ、山伏の修験の場です。山伏秘伝の味といわれる柚ごしょうや山菜料理が残ります。山間部はいずれも川の源流であり、おいしい水が豊富にあります。その水を利用して各地で名物の豆腐や蒟蒻(こんにゃく)を作っています。また、山では、色んな種類のキノコやゼンマイ、ワラビ、ウド、フキノトウ、タラの芽などの山菜、野草などが四季折々にとれます。その他に、鯉の養殖もおこなわれています。
これらのなかでも、手造りと銘打った食べ物や料理が、英彦山や各地で聞かれますが、特に、蒟蒻や豆腐などの他、手打ちそばなども食堂で見かけますし、郷土料理などと共に手造り教室なども開かれているようです。
みなさんは〝ぼんし餅〟を知っていますか。ぼんし餅とは「くだけ米」(くだけた玄米の粉)に餅米(もちごめ)を少し混ぜて造った餅のことです。筑豊のとある場所では「年の瀬に訪問する神様には、ぼんし餅を供えよ」というそうです。「ムラ人が、今年は不作でぼんし餅しか、供えられませでした」と年神様に言うと、「そうか、それなら来年は、豊作にしちゃろう」と、年神様が答えたという話を聞いたことがあります。最近は、健康にいいということで人気があるそうです。
福智町の「方城すいとん」は、三菱炭鉱の社宅で大鍋で振る舞われていたすいとんをもとにしたものです。「戦時中の食料のない時代を思い出す」と言う人もいますが、戦時中を知らない世代にとっては、新しい料理として受け入れられているのではないでしょうか。特に、材料やだしなどは現代風においしく仕上げられており、野菜豊富で健康的な料理になっています。現在、福智町では「方城すいとん」の普及に努めており、学校給食や町内の食堂で味わうことができます。
最近では、経済的な向上や社会情勢の変化もあり生活も大きく変化しています。ほぼ忘れられかけた食文化を知ってもらうことで、その歴史や背景を伝えていくことは大事なことだと思います。