コラム 鮎返(あゆがえり)の甌穴群(おうけつぐん)

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【関連地域】川崎町

 甌穴(おうけつ)とは、川底や海岸にできる円形の縦穴のことです。

 河底(かわぞこ)や河岸(かわぎし)が硬い岩盤(がんばん)でできていると、何らかの影響で岩盤に割れ目等が生じ、そこに水流による浸食でくぼみができることがあります。このくぼみの中に岩盤より硬い礫(れき)(小石)が入ると、水の流れによってその礫が回転し、くぼみを削り丸みを帯びた円形の穴ができます。その後、川底が浸食等で深くなると、甌穴のできた硬い岩盤は水面より高くなり、地表に見られるようになります。これを学術的に「甌穴(おうけつ)」とよぶのです。甌穴は、「自然のイタズラ」や「自然の芸術」と呼ばれ、上記にあるような一定の条件がそろわないとできませんし、何千年、何万年という気の遠くなるような時間を必要とします。

 田川市郡では、川崎町の鮎返橋付近で甌穴群を見ることができます。中元寺川水系ではここでしか見ることができない貴重なものであり、平成二七(二〇一五)年には町指定文化財第八号に指定されています。この甌穴群は、江戸時代の文書内にも登場し、昔から景観美しい名所として親しまれていたことが解っています。

 しかし、今の甌穴群は鮎返の本来の姿ではありません。古い記録を調べると、大正時代に洪水対策や船の行き来をしやすくするため、ダイナマイトを使って4回破壊したことが解っています。当時の姿を記録した写真が何枚か残っていますが、現存しないのが大変悔やまれます。

 現在、鮎返橋付近では破壊を逃れた甌穴のほかに、新しい甌穴が誕生しつつあります。このまま何千年、何万年と保護されていけば、以前のような素晴らしい景観がよみがえることでしょう。この貴重な文化遺産を皆さんも大切にしていただきたく思います。

(永末夏菜)

鮎返の甌穴群(川崎町川崎)