年中行事の妖怪
田川地方には、昔話や伝説にたくさんの妖怪が登場します。代表的なものとして英彦山の豊前坊天狗や石段を造った鬼などがいます。またマチやムラで人をだまして悪さをしたおさん狐の話も各地でよく聞かれていました。
また、川の多いこともあり河童の伝説もたくさんあります。河童は、この地域ではカワントン(川の殿様)と呼ばれていました。牛や子どもを川に引っ張り込んだり、恩返しに薬の作り方を教えたりと、河童にまつわる話は切りがありません。金辺川沿いの香春町や田川市糒に伝わる話によると、「水神祭の時には竹の輪切りを供える」そうです。理由は、子供たちにはタケノコを食べさせるが、河童には竹の輪切りを与え、人間はこんな硬い物を平気で食べていると怖がらせ、近寄らないようにするためだといいます。多くの地域では、氏神の水神祭などで「河童ずもう」をしています。最近は、少子化のせいで参加者が少なくなりましたが、この時にもらった、おにぎりを食べると河童に引かれないといわれました。
福智町上野地区では、一昔前、夏になると「すがら」と呼ばれる虫送りの行事が行われていました。田畑につく害虫を追いやるためのもので、この時に歌われる歌詞に「すがら(菅原)のぼだいしょ(菩提所)しいは川に流せ」という一節があります。この「しい」とは妖怪のことで。カワウソやテンに似ており、「猪の子が十二の子を産み、それが全部太ればシイになる」と言われています。怖いのは「シイひとにらみ」と言われ、狙われた牛馬は、ひとにらみされただけで倒れるほどの魔力があったそうです。これに勝つのは猿だけで、昔は牛小屋の上に猿の首をかけて魔除けにしていたそうです。
最近までいた妖怪
峠や池などや大きな施設、学校などにも妖怪伝説が伝えられています。
香春町柿下から犀川(さいがわ)に抜ける旧大坂峠(長谷越)には、「ヒダル神」が住んでおり、取り憑(つ)かれると行き倒れになると言われていました。ひだる神は、ダラシとも呼ばれ、西日本に多い憑きものの一種で歩いている人に取り憑く神で、峠や墓地などで、急に気力が抜けた感じになります。元々行き倒れになった人が妖怪になったものと言われ、長谷越えをする時は、荒神シバの葉をかんだらとりつかれないと言われています。
下田川のとある小学校では、百年程前に「青坊主」が出たといいます。現在のトイレと違い薄暗い便槽(べんそう)の時代、それも校舎の奥にあったトイレは、日頃生徒も近寄らないところだったのですが、折り悪く腹痛を起こした生徒が仕方なく用を足しほっとした途端、生温かいものがスーッとお尻をなでたのです。「ギョッ」として下をみると、そこには、青い手が・・・「ギャー」と叫び生徒は一目散に飛び出したそうです。学校では青坊主が出たと大騒ぎで、その後も何度となく続くことから思案の末「無縁供養塔」を建てたそうです。今はそんな話は忘れられているようです。水洗式になりさすがの青坊主も出にくくなったのでしょうか。
最近よく都市伝説と言う言葉を聞きますが、その妖怪のひとつとして、「テケテケ」があります。場所は、田川のとある場所で、その声が聞こえるそうです。どうして、ここに居るのか地元の人に聞いても詳しいことはわかりません。
今は忘れ去られた妖怪たち、この伝説の地を通る時思い出してください。もしかすると出会えるかもしれません。