昔々、現在の川崎町真崎の川はあちこち曲がりくねっていて、多くの淵がありました。その淵にはカワントン(河童)が住んでいて、水浴びに来た子どもを淵に引きずり込んで尻ゴー(尻子玉)を抜いていたそうです。
カワントンのいたずらに困った村人はどうにかしてカワントンを退治しようと思っていましたがなかなか打つ手がありませんでした。
そんな時、ある人が
「こげな時こそ川神様に頼まにゃどげんするか」
同意した村人たちは川神様にカワントン退治を頼みました。
カワントン退治を頼まれた川神様は
「どげんしたもんか」
しばらく考えこんだ後、ある一計をしかけることにしました。
ある日、川神様はカワントンが住んでいる淵に出かけて、
「おーい。カワントンやーい。お前さん、大そう相撲好きっちゅうことらしいが、きょうは、わしと相撲ばとらんかいのう」
川神様の誘いの声が響きます。すると、もともと相撲好きで力自慢のカワントンは二の返事で
「うん、とろう」
すると、川神様が
「ただ相撲を取るだけというのは面白くないけん、賭けでもしようじゃないか」
カワントンは
「よかろう」
と、返事をしたので、川神様は
「もともとこの川はわしが支配しとるから、わしが負けたらお前さんはどこに住んでも構わん。だが、もしお前さんが負けたら鮎返りの淵からわしが住んどる淵の間に住んじゃいかんごとなるがいいか?」
カワントンは川神様の条件も承知して相撲が始まりましたが、どちらも一歩も引きません。腰に思いっきり力をいれた川神様はウントコ ドッコイショ。
川神様はカワントンを飛ばしてしまいました。こうして川神様が勝ち、カワントンは約束通り真崎の淵を出ていきました。これ以降、カワントンに尻ゴーを抜かれて溺れる人はいなくなりました。
喜んだ村人たちは川神様にお礼をするためにお祭りのたびに相撲を奉納するようになったとのことです。