編集後記

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編集委員長 中野直毅

 田川地域は古代から大陸や朝鮮半島とのつながりが深く、遠賀川流域はゆりかごのように歴史文化をはぐくんできました。近現代、田川地域の歴史文化は石炭産業の発展により、豊前・筑前が融合した筑豊という歴史の枠組みの中で、多様性や豊かさという文化的価値をはぐくんできました。

 こうした歴史文化を面として紐解くために田川郷土研究会は平成三十年、田川市立図書館『筑豊田川デジタルアーカイブ』を構築し、次いで『筑豊石炭礦業史年表』検索システムを完成させました。令和元年には『郷土田川』全総索引作りが完成、広める課題と深める課題の両面から田川の歴史文化を読み解く段階を迎えました。ちょうど、田川広域観光協会が設立十周年を迎える時期にあたり『新・田川紀行』の全体内容を一年半かけて構成することができたわけです。

 これまで多く取り上げられてきた既存の歴史からは、あえて軸足をずらし、近代では石炭技術者や巡礼・慰霊、中世の内容も修験道や懐良親王、近世では伊能忠敬や大行事峠改修など、物語性や関連を追求しやすくしました。

 QR コードやリンク頁はそのガイドです。荘園など実感が乏しいものはあえて削除し、物語性を重視しました。特に昔話や民俗などの文化面をできるだけ取り上げ、実際に存在するものに触れられる事例に絞ることでサスティナブル・ツーリズムなど、今までのマスツーリズムとは異なる観光の入り口としました。読者の「わかるとおもしろさ」を大切に、ヒントやアイディアを提供し物語を描きやすいもの、これからの取組の入り口を示唆できるものであることなどの構成要素が活かされ田川八市町村の百科事典的な展開の『新・田川紀行』になったのではないかと考えています。

 末筆になりましたが本書の制作のため新たな資料・聞き取りにご協力いただいた地域の方々に心から感謝申し上げます。また、佐々木四十臣先生、池田善文先生、牛嶋英俊先生、嶋田光一先生には他地域からの視点で玉稿をお寄せいただき感謝にたえません。特に森弘子先生には執筆中の他原稿がある中、快くよくお引き受け頂き心より感謝いたしております。編集・執筆いただいた諸先生には日常業務繁多・コロナ禍で調査研究が滞る中での執筆でご苦労をおかけし、この場をお借り深く感謝申し上げます。