17図 サネカズラ
南方系の植物とは、地球が現在より暖かい時代、南の方の暖帯にあった植物が、北上してきて現在自生しているもの、したがって南の方に行くにつれ多く繁茂し、北の方では極端に少くなり、また見られなくなるような植物である。町内でみられた主なものをあげると、「サネカズラ」モクレン科の植物でスギ林下にみられた。果実は4ミリくらいの赤色の球形がいくつも集まってボール状になって吊りさがる。サネカズラの「サネ」は実、「カズラ」は蔓の意味。蔓を切ると粘る糊状の液をだす。別名ビナンカズラともいう。
昔、この木を細かく切り水に漬け、その水で髪を洗うと養毛剤の作用と美しいつやがでるというので、男女共洗髪剤として使用していた。武士も用いたところから「美男葛」と呼ぼれた。本町付近では果実をみることはまれであろう。
18図 ゴンズイ
「ゴンズイ」ミツバウツギ科の高木で葉は濃緑色でつやがある。秋にナンテンくらいの赤い実をたくさんつけて美しい。スギ林や屋敷森の外周でみられた。魚の中に本州中部以南の浅海に住んでいるナマズに似たような魚で「ゴンズイ」というのがいるが、この魚は食用にもならない無価値の魚である。この木も高木であるが何の役にもたたないので無価値の魚の名がつけられたという。
その他カクレミノ、ツルグミ、ナツグミ、ヤブムラサキ、シラカシ、ヤブツバキ、ヤブコウジ、アオキ、シロダモなど、また庭園などから逸出したと推測されるマンリョウ、センリョウ、ヒイラギ、オモトなどもみられた。シダ植物は暖地性の南方系のものが割合多く、イノモトソウ、オオバノイノモトソウ、アスカイノデ、イノデ、オオイタチシダ、セイタカシケシダなどがスギ林の下にみられた。