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河川の植物

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 町内の主な河川を大きく分けると鬼怒川と灌漑用水河川に二分できる。鬼怒川は年間を通してかれることなく流れ水量も豊かであるが、時折洪水により土砂を大きく移動させ植物相を変えてしまうことがある。したがって大群落をつくっていても簡単に消滅してしまったり、新しい堆積地に新しい植物を生みだしたり非常に不安定な所である。一方灌漑用水河川の方は洪水時には水量調節も行なわれるし、水流も植物を根こそぎ流失させるようなことはない。したがって鬼怒川に比較すると安定しているということができる。最近河川改修がすすみコンクリートの護岸がなされて植物の種類が減少しつつあり、特にU字溝の所は無に等しい状態である。
 かつてはよく見ることのできたという「コウホネ」は今回は見いだせなかった。
 鬼怒川にみられた植物の主なものはヨシ、ツルヨシが優占種で低木にはカワヤナギ、オノエヤナギ、コゴメヤナギ、イタチハギがみられた。流れの遅い岸辺にはオランダガラシ、タネツケバナ、クロモ、コカナダモなどが群落をつくっていた。中洲にはイヌビエ、オギ、オガルガヤ、ミゾソバ、オオイヌタデ、ケアリタソウ、ムシトリナデシコ、カワラヨモギ、カワラハハコ、キショウブ、メマツヨイグサ、わずかであったがゴキヅルも自生していた。
 灌漑用水河川には、ミクリ科のミクリが多くみられた。七、八月頃一メートルくらいに生長して果実をつける。小さい実がたくさん集まって球状果となり、その形状がクリのいがのようにみえるので「実が栗」ミクリという。繁殖力が旺盛で川の中いっぱいに広がるから水の流れを妨げ農家からは害草として嫌われている。

20図 ミクリ

 トチカガミ科、コカナダモ近年急に繁殖してきている。茎が紐のように長く伸び、束状になって水流にまかせてゆれ動いて自生している。紐状の茎には普通三枚の葉が輪生していて川全面に広がることもまれではない。その他ツルヨシ、ミゾソバ、セリなどが多く、ところどころにガマ、マコモ、キショウブ、セキショウ、ヒルムシロ、コナギ、ミゾソバ、アキノウナギツカミ、タネツケバナ、ミズハコベ、ミズニラなどがみられた。
 水田に浮遊する植物で下等植物のタイ類イチョウウキゴケは、扇形の葉をしていて各地でみられた。ウキクサ科のウキタサは以前はどこの水田にもみられたのだが、今回はわずかしかみられなかった。イネの耕作中の水田は除草管理がよくなされていて植物は少ない。アギナシ、ヘラオモダカ、コナギなどがわずかに散在していた。畔にはピンクの可愛いい花をつけたキキョウ科のミゾカクシが群生していた。この草は水路の溝を覆いかくすほど群生するからこの名がある。別名はアゼムシロ、畔に筵を敷いたように繁茂するという意味の名である。稲刈りを過ぎる頃よりホシクサ科のイヌノヒゲが目立ってみられた。水田によってはまったく草のない所も少くなかった。休耕田は日当りよく肥料の多い湿地のため、好水性の植物をはじめいろいろな植物が繁茂する。特にミズアオイ科のコナギは繁殖力が強く群落をつくりやすい、場所によっては全面覆いつくしている所もあった。その他耕作田、休耕田内にはアギナシ、ヘラオモダカ、メヒシバ、イ、ヒナガヤツリ、チャガヤツリ、コゴメガヤツリ、クグガヤツリ、ヒンジガヤツリ、ハリイ、キクモ、アブノメ、キカシグサ、ホソバヒメミソハギ、ミズハコベ、イヌタデ、オオイヌタデ、タカサブロウ、アメリカセンダングサ、アキノノゲシ、タウコギ、ヒメムカシヨモギなどがみられた。

21図 コナギ