22図 屋敷山風景
屋敷山というのは住居のまわりの防風林のことでスギが優占樹木であることはいうまでもない。防風用のため伐採することもなく、樹高二〇から三〇メートルくらいのスギ、シラカシ、ケヤキ、アカシデ、モミ、ヒノキ、コナラ、クリなどの高木があり林内は暗く欝蒼としている。そこには日陰を好むいろいろな植物が自生し、宅地に続く林縁付近は日当りのよい日照を好む植物が自生していた。また外周林縁には水路がまわっている所が多く、そこには水辺を好む植物が自生していた。このような環境条件をもつ屋敷山(屋敷森)の特徴は、一、日当りを好む植物と日陰を好む植物が共存し、面積の割に種類が多い。二、わずかしか離れていない他の屋敷山(屋敷森)の植物と極端に分布の種類が異なることなどがあげられる。ある屋敷山(屋敷森)には、このあたりであまりみられなかったユリ科のショウジョウバカマの大群落があった。目立った大群落の主なものにヤブコウジ、ジャノヒゲ、ナガバジャノヒゲ、ホウチャクソウ、ベニシダ、シラカシ、アオキ、サネカズラなど一種類ごとに繁茂していたのは興味深いものがある。これらの植物は人為的に植栽されたものが逸出して繁殖したのか、自然に繁殖したか判断はできないが見た限りでは自然に自生したと思われた。林内にみられた高木はシラカシ、ケヤキ、ミズキ、モミ、アカシデ、クリ、エゴノキ、コナラ、ヒノキ、ヤマザクラ、ヌルデなど。亜高木はアオキ、ムラサキシキブ、ネムノキ、ガマズミ、ヤブムラサキ、カヤ、コクサギ、ニワトコ、ウメモドキ、サワフタギ、ゴンズイ、ヤマグワ、コナラ、オユグルミ、ニシキギ、ヒサカキなど。草本ではノブドウ、アメリカヤマゴボウ、アカソ、コアカソ、ナガバヤブマオ、ミズヒキ、ハエドクソウ、ナガバハエドクソウ、ヒカゲイノコズテ、ヤナギイノコズチ、アオミズ、ハリガネワラビ、ヤマイタチシダ、オクマワラビ、ナルコユリなどと多くの種類がみられた。