石器は、動物を獲る狩猟具、作業や道具づくりの工具、食べ物の調理用具などがある。狩猟具の代表は先端を尖らせた刺突用の尖頭器、ナイフ形石器。旧石器時代の終末には、棒の先にはめこみ植刃とする細石刃が登場する。工具には、切ったり削ったりする削器・搔器や彫器、かがり穴を開ける石錐、伐採や加工に使う局部磨製石斧など。調理具には、削器・搔器が兼用される他、敲いたり潰したりに使う円礫、蒸し焼きに使った焼け礫などがあげられる。これらの定形石器と共に、石屑である剝片も補助的な道具(使用痕のある剝片)として盛んに活用されていた。
定形石器の主役は狩猟具。栃木県の旧石器はほとんどが上部ローム層に含まれる後期旧石器時代のものだ。その時代の大部分を占めるのがナイフ形石器で、古いタイプの磯山型ナイフ(真岡市・磯山遺跡)、最盛期の砂川型ナイフ(小山市・八幡根東遺跡、同・本郷前遺跡)などの変遷がある。これらのナイフ形石器は、母材から連続的に欠き取った剝片(石刃)を素材としてつくられる。これを石刃技法と呼び、一万八,〇〇〇~一万五,〇〇〇年前に確立したとされる。ナイフ形石器の主機能は手持ちの槍の穂先とみられるが、温暖化に向う動物相の変化に対応した形態の推移があったようだ。旧石器時代の終末近くに尖頭器文化(佐野市・上林遺跡、塩谷町・百反畑遺跡)が出現し、最終末に細石刃文化(鹿沼市・坂田山遺跡、益子町・星の宮A遺跡)が盛行する。この尖頭器は木葉状を呈し、投げ槍の穂先として用いられたとされ、槍先形尖頭器と呼び分けて、古い時代の斜軸尖頭器と区別している。槍先形尖頭器は、両面加工によって整形され、胴が幅広の丸型から細身の柳葉形のものまで形態差がある。
10図 ナイフ形石器・八幡根東遺跡(「八幡根東遺跡」県教委より)
これらは砂川型ナイフと呼ばれ、先端を尖らせて全体をナイフの形に仕上げている。素材の剝片を斜めにおり、その一辺の鋭い刃は原形のまま残し、他の片は刃をつぶし、整形をしたものである。