旧石器時代の最も寒冷だったビュルム氷期(約二万年前)を過ぎると、寒暖を小刻みに繰り返しながら、一二,〇〇〇年前頃にはしだいに気候が温暖になっていった。この気候の変化により植生は徐々に変化してゆき、それに伴い動物相にも大きな変化が起こっていった。
すなわち、気候の温暖化・湿潤化により、モミやトウヒ・ツガなどの亜寒帯針葉樹林が北方や山岳部へ後退していき、中部・関東以北のナラやブナ・カバノキなどの落葉広葉樹林(ナラ林)帯と関東から九州までの西南日本を中心としたカシ・シイ・クスなどの照葉樹林帯の異なった二つの森林が広がっていった。そしてこの気侯と植生の変化は、ナウマンゾウ・オオヅノジカを代表とする大型獣を絶滅に追いやっていき、新たにイノシシやニホンジカ・タヌキ・ノウサギなどの中小型獣の繁殖を促していったのである。
当然のことながら、この動植物相の変化は、人間の生活様式にも大きな変化をもたらしたことは言うまでもない。これが縄文時代の幕開けである。