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弓矢の発明

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 気侯の温暖化は、それまでの亜寒帯針葉樹林と草原などに好んで生息していたナウマンゾウやマンモスなどの大型獣を絶滅に追いやっていった。これに変わって落葉広葉樹の森にはニホンジカ・イノシシ・カモシカなどの中型動物やキツネ・タヌキ・ノウサギなどの小型動物が急増していった。一五,〇〇〇年から一〇,〇〇〇年前ごろの間の出来事である。
 この動物相の変化は狩猟の方法にも大きな変化をもたらした。すなわち、それまでの動きの鈍い大型獣の捕獲に対しては突き槍(木葉形尖頭器)や投げ槍(有舌尖頭器)を用いていたが、俊敏な動きの中小型動物や鳥類が狩猟の対象となったことから、持ち運びに便利でやや離れて獲物を狙うことのできる弓矢という飛び道具が発明されたのである。
 一方、弓矢による狩猟を補うものとして、落とし穴や罠猟も古い段階からあったことは想像に難くない。また、弥生時代にはほとんどみられないイヌの埋葬例が縄文時代には多く、愛媛県上黒岩遺跡では早期の段階のものが発見されていることから、縄文時代の早い段階から猟犬を伴った狩猟方法が存在したことがうかがえる。

2図 砂部遺跡出土の狩猟用石器
1.木葉形尖頭器 2・3.有舌尖頭器 4・5・6・7.石鏃