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水晒しの施設

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 水晒しなどの木の実の加工を実際行ったと思われる遺構が、小山市寺野東遺跡から発見されている。ひとつは後期初頭の水場遺構で、幅一二メートル、奥行き一七メートル、深さ一メートル以上U字状に台地の斜面を削って水を人工的に引き込んだもので、北側には作業場と考えられる平坦面を造り出している(14図)。もう一つは、この北側から発見されたクリの木を用いた「木組み遺構」で、水場遺構よりやや新しい後期後半から晩期のものである(15図)。これらの遺構からはトチの実の皮がたくさん見つかっており、アクを抜くための水晒しをおこなった施設であったと考えられている。
 アク抜きの技術の習得は現在、前期まで確認されているが、早期、さらには土器出現期まで今後さかのぼる可能性がある。しかし、トチについては全国の出土例をみても寺野東遺跡をはじめ後期後半から晩期の遺跡での出土が多い。アク抜きの難しいトチがこの時期になって盛んに食べられるようになったのは、気候の寒冷化によるクリの凶作が原因であったのかも知れない。

14図 寺野東遺跡の水場遺構復元想像図


15図 寺野東遺跡の木組み遺構