土器作りの最初の作業は粘土の採集で、集落の周辺の露頭などから比較的容易に採集できたものと思われる。粘土は水を加えすぐ捏ねる場合と、一旦乾燥させてから粉砕して使用する場合とがあり、西那須野町槻沢遺跡では、採集してきた粘土塊を土坑に貯蔵しておいたと思われるものが発見されている。その後、粘土には砂粒を混和材として入れて十分に捏ねるが、混和材の砂粒の量は縄文土器の場合、全体の二~三割と多い。これは、大形土器の整形を容易にすると同時に、乾燥・焼成時のひび割れを防ぎ、火にかけた時の熱伝導を良くし耐熱性を高める効果も果たすなど、縄文人の知恵と経験によるものである。
混和材は砂粒のほか、時期や地域により意識的に特殊なものを加える場合がある。早期後半の条痕文系土器群から前期前半の羽状縄文系土器群には粘土に植物繊維を混入するのが特徴的で、本町でも大用地遺跡から出土した土器の多くに認められる。植物繊維を混入する理由については明確ではないが、器壁に空間が増し軽量となることが一つの目的と考えられている。また、上の原遺跡や石神遺跡などで出土している中期の阿玉台式土器には雲母を混入して、全体的にキラキラと光らせる装飾的効果をもたせている。このほか、全国的には滑石・黒鉛・貝殻粉などの混和材も知られている。