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成形と焼成

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 混和材を入れ粘土を練り上げると、粘土の粘着性・可塑性を高めるため一定の期間「ねかせ」を行う。そうして素地が出来上がると、幅二~五センチほどの粘土紐を作り積み上げていき、接合部を延ばしながら、成形していく。接合部は内側を下方へ伸ばした内傾接合のものや、内外面とも下方に小さく伸ばした山形接合のものがあり、やや乾燥して接合したため割れ目が口縁に似た擬口縁状になったものもある。また、上河内町古宿遺跡をはじめ本県の後期前半の土器には、接合面に刻みを施したものがしばしば見られる。その後、縄文・沈線・隆帯などで各時期それぞれの特徴のある文様で装飾していくが、水漏れを防ぐため内面や外部胴部下方は小石などで丹念にミガキ調整が行われている。
 成形が終わると急激な乾燥を避けるため、一〇日から二週間ほど陰干しを行う。土器が乾燥するといよいよ焼成が行われる。焼成温度は六〇〇~九〇〇度で、最初はから焚きにより地面の水分を取り除き、あぶり焼きにより土器を乾燥させた後、薪をおいて徐々に温度を上げ焼いていったであろうということが焼成実験などから明らかにされている。縄文土器は野焼きで平地で焼かれたため、土器焼成の遺構が見つかるのは稀である。また土器が一年を通して常時焼かれたものではなく、春ないしは秋の一定の時期に焼かれたことも、焼成遺構の発見を困難にしている。しかし、土器作りの作業を考えると、集落のなかで焼成が行われたことは間違いなかろう。
 ところで、縄文土器の多くは厚手で大きな底部から口縁部に向かって外側へ開く大型で深鉢形のものが多い。
 これは保温性が高く、炉に据え長時間弱火で煮込む調理に適している。一方、弥生時代の甕や胴部が球形に近く器壁を叩き締めたり、削りにより数ミリの薄さにした古墳時代から平安時代の土師器の甕などは、強火で短期間に加熱を行う炊飯に適しており、縄文土器とは大きく異なる。煮炊きだけをみても、各時代のその用途に応じた器形が考案されたことが分かる。

18図 土器作りの工程(戸沢充則 1985「縄文人は生きている」有斐閣より)