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土坑内の遺物

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30図 上の原遺跡12号土坑と出土遺物

 土坑内に堅果類や根茎類が貯蔵の状態で遺存している例は実際にはほとんどなく、発掘調査時には、貯蔵という本来の機能を失った後のゴミ穴に転用された状態のものが多い。埋土中には破損した土器や石器、炭化した木の実・シカやイノシシなどの獣骨片・焼土・炭化粒・礫などが含まれる場合が少なくない。廃棄後の土坑には、食料の残滓、土器や石器の破損品が捨てられた可能性が高い。槻沢遺跡では後期前半の袋状土坑から二個一対の耳飾りが出土しており、墓壙に転用されたと思われるものも稀にある。
 中期中頃の袋状土坑からは、槻沢遺跡の大型土坑の三一個体を最高に、大田原市湯坂遺跡の土坑で二七個体、本町の上の原遺跡12号土坑の二一個体など、完形やほぼ完形の土器がたくさん廃棄されている場合がある。これらの土器は一括して廃棄された同時期の遺物として捉えられるもので、地元の土器と隣接地域の土器の共存が立証できることなどから、土器編年の研究に役立っている。