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天然のガラス

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 黒曜石は打ち欠くことにより簡単に鋭い刃をつくることができる天然のガラスであり、ナイフ形石器や石槍、石鏃の素材として使われた石材である。現在、全国で七〇カ所以上の原産地が知られており、今日では理化学分析により製品からも原産地の特定ができるようになってきている。
 黒曜石はその特質から需要が高く、約二万年前の旧石器時代から流通しており、縄文時代も中期を中心に広く流通していた。翡翠同様、青森県三内丸山遺跡では六〇〇キロも離れた長野県和田峠産の黒曜石の石鏃の出土が確認されている。
 本県でも高原山に黒曜石の産地があるが、顆粒状の白い不純物の結晶を含むものが多い。この黒曜石は、本地域の同型式の土器の分布範囲同様、県内はもとより茨城県や東北南部に流通していることが明らかになっている。上の原遺跡でも高原山産の黒曜石が発掘調査により出土しているが、産地から三五キロ南東の地点にあたる。一方、数は少ないが、遠く離れた信州産や伊豆諸島の神津島産の黒曜石も県内から出土している。

36図 黒曜石の産地と流通経路(「真岡市史」第6巻より)