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西関東の土器

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 連弧文土器は口縁部に二~四本の沈線で下弦の半円弧状の文様を横方向に連ねる土器である。武蔵野台地や多摩丘陵を中心とした東京・埼玉・神奈川などの西関東に多く出土しており、この地域を中心に独自に成立した土器と考えられている。本県では、概ね中期後半の加曽利E2式、大木8b式の後半頃に出現し、一遺跡で数点見られる程度である。宇都宮市御城田遺跡、芳賀町免の内台遺跡、栃木市星野遺跡など県央から県南を中心とした一〇数遺跡で出土している。
 上の原遺跡では、この連弧文土器は二二、五四号土坑で出土しているが、いずれも破片で全体の器形が明確でない。二二号土坑のものは(2)二段構成の連弧文であるが、西関東ではほとんど見られない波状口縁となるものである。五四号土坑のものは(1)地文に本県では少ない条線文が施されている。しかし、連弧文自体の文様が単純であるため、これらの土器が搬入品か模倣品かの判断は難しい。いずれの連弧文も二~三本の平行沈線で引いているが、沈線は乱れており、稚拙さは否めない。
 これらの次の段階の連弧文土器が一三六号土坑の土器(3)であろう。連弧文は波状文に変わり、二二号土坑の土器のように二段の連弧文を交互にずらさず、ほぼ同じ波長で描かれている。

38図 上の原遺跡出土の連弧文土器