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石製模造品の儀式

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 砂部ムラで特徴的な遺物がある。石製模造品とよばれる石の道具である。形からみれば三種類あり、二等辺三角形、円形若しくは楕円形、Cの字形などである。すべて一~二ミリほどの小さな孔があけられている。
 大きさは三~五センチ程度で、手のなかに充分おさまる。いずれも扁平なもので、石材は蛇紋岩や泥岩、緑色片岩などの軟質で細工がしやすいものが選ばれている。軟質ということはキズがつきやすく、割れやすいことでもある。事実、表面には製作の際の削痕が多く認められる。取り急ぎ大量生産された石器ということであろうか。
 石製模造品は古墳の副葬品として見出されることが多い。しかも、時期は五世紀代にほぼ限定される。武器として刀、剣、楯、農工具として斧、鎌、箕、その他機織具など多種多様で、概して精巧な作りである。この時期は一般集落でも出土例が多いが、粗雑な作りの、この三種類が主である。これらにはモデルがある。二等辺三角形のものは先端を切先に見立てて剣を、円板は鏡を、Cの字形は勾玉を、それぞれ祖形としたと考えられている。
 砂部ムラでは、三種あわせて約五〇点が見つかっており、約七割が剣、二割が円板、一割が勾玉形である。これらは、一住居一点程度の場合が多いが複数あわせもつこともある。
 石製模造品は限定された時期に大量に流通したようで、それを製作した工房跡も発見されている。県内では小山市東南部でいくつか見つかっている。その種の遺跡では、住居跡から原石や加工の際の石屑、製作途中の未製品が出土している。砂部ムラではみな完成品で、製作途中のものはない。製品として持ち込まれ、使用したものであろう。これらの石製模造品は、穴に紐を通し、木の枝に結ぶなどして、家ごとに祀りの儀式を執り行っていたのであろう。

23図 石製模造品