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遺体と副葬品

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44図 亀梨・箱式石棺全体図

 古くから通っている辰街道に沿った高台に亀梨の集落がある。屋敷林に囲まれた農家が立ち並び、それぞれの区画で家屋、庭、畑などが一体となった静かな暮らしが繰り返えされている。この集落に点在する箱式石棺や小円墳の亀梨古墳群は屋敷地にあり、暮らしの中で守られ維持されたものであろう。
 一九八四年一〇月、鈴木重良宅で庭園工事を行った際、箱式石棺が見つかった。当主の鈴木は地方史研究者の長嶋元重に連絡、長嶋の計らいで県立博物館の橋本澄朗・上野修一が出向し、遺構の観察・実測(橋本澄朗 一九九一)を行った。この時には、すでに棺内の遺物は取り上げられており出土状態を記録することはできなかったが、寸前に箕輪公道がカラー撮影しており貴重な記録となった。調査の後、石棺は原位置で埋戻し保存されている。
 この箱式石棺の概要は次のとおり(資料として「史料編Ⅰ」を参照)である。

45図 古墳時代の箱式石棺・亀梨遺跡(上高根沢 箕輪公道提供)

 板状に加工した凝灰岩の切石を箱形に組んだ石棺で、長軸は東西方向。大きさは、内法で長さ一九五センチ、東端幅四三センチ、中央幅四五センチ、西端幅二八センチ、深さ二五センチ。蓋石は発見時に破壊されたが、一辺四〇センチほどの方形で三枚以上あった。床石は七枚、側石は、北側が四枚、南側が三枚、小口の側石ともども厚さ一〇~二〇センチ。棺内の面はノミで平滑に仕上げてあった。
 棺内には、東小口寄りに頭骨が、西小口寄りに両脚骨が伸展葬の状態で置かれ、南壁ぎわに直刀一本と足元寄りに鉄鏃つきの矢柄、北壁ぎわにも矢柄が計三〇本ほど置かれており、管玉六、棗玉二点が出土した。人骨は、大腿骨が扁平な特徴などから古墳時代のものとみられるが、熟年の女性と鑑定されるという。