16図 リサイクルの紡錘車
紡錘車は当時の生業に係わる数少ない遺物のひとつである。紡輪とよばれる車の中央に穴があいており、そこに軸(紡茎)を差し込んで用いる。多くの場合紡輪のみが出土するためこう呼ばれている。糸を紡ぐ道具で、車を回転させながら繊維に撚りをかけ、紡茎にまきとっていく。紡錘車は我が国では弥生時代からみることができ、織物の存在は農耕社会のあかしとされている。材質は土製、石製、木製、鉄製などさまざまで、形も扁平な円板、截頭円錐形などがある。径は三~五センチ。紡錘車は重さが問題となる。同じ材料をつかった場合、重いものは撚りはあまく太い糸になり、軽ければ細く撚りの強い糸ができる。
砂部遺跡では平安時代の紡錘車は一〇点ある。土製、石製、木製、鉄製があるが、もっとも多いのは土器や瓦の再利用、つまりリサイクル品である。破片となって本来の使用目的を失ったあと、周囲を擦ったり、穴をあけたりして紡錘車としているのである。
糸から布へ、機織りの道具は木製のため遺存することがまれで各家々で織られていたかはあきらかでない。奈良時代の織幅は大きく、協業が必要となるため、租税等を請け負った有力者の屋敷などで集中して織られていたとする考え(鬼頭清明 一九八八)もある。