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遺構をよむ

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18図 虎口と横矢


19図 虎口の工夫

 ふるさとの中世史を語る資料は、通常ほとんどないに等しい。したがって、残されたわずかな資料からできるだけ多くの情報を引き出すことが重要になってくる。こうした視点から、近年注目を集めているのが城館跡の遺構をよみとく作業である。
 では、遺構をよみとくために何をする必要があるだろうか。まずは現存する遺構を調査し、それを図面化する。と言っても、城館跡は基本的に土塁や空堀で構成されているため、自然の地形か人工の構築物かどうかを見分けることが必要である。また、現存する遺構は廃城以降、農地となったり山林となったりして多かれ少なかれ変貌しているため、どこまでが城館に伴う遺構かも見極める必要がある。現存していない部分も、古い地籍図や絵図などによって復元できる場合もあるので、それらも参考にする。
 図面ができたら、それをもとに城館の構造を想像してみる(実際にはこの作業の大半は図面の作成と同時に行う)。例外はあるが、通常城館はその中心部となるスペース(主郭)を防御するために、外からの敵が主郭に辿り着きにくいよう工夫をこらす。出入口(虎口)を設けてルートを限定したり、段差を設けたり、堀を掘って遮断したり―。やがて戦国時代も大詰めを迎えてくると、そうした工夫がさらにこらされるようになってくる。例えば塁線を屈曲(折り)させ、敵の正面からだけでなく側面からも攻撃(横矢)できるようにするなどがそうである。また虎口についても脇に突出部を設けて横矢をかけたり、方形のスペースを設けて敵の直進を防いだり(枡形)、虎口前面の堀の対岸に橋頭堡(馬出)を設けたりするようになる。こうした工夫は、その時代だけでなく、築城主体やその目的によって異なってくるため、城館跡の歴史を推測するうえで貴重な情報となるのである。