では、こうした工夫がいつ誰によってなされたかは、どうやってわかるのだろうか。その答えは、一つの城館跡だけ見ていたのではわからない。周辺に残る多くの城館跡の遺構を調べ、比較していくことによって初めて可能となるのである。そして、城館跡の性格づけが推定できるようになったとすれば、当然それに関わった人々や、街道・村落などの様子など多くの疑問がわいてくるはずである。そしてこの疑問が忘れられたふるさとの中世史をひもとく糸口となっていくのである。
城館跡は全国に数万あるといわれる。そのうち、調査がなされた城館跡はほんの一握りにすぎない。城館跡を解明する作業はまだこれからの課題なのである。だからこそ、今残されている城館跡を、未来に伝えていかなくてはならないのだ。