室町時代の仏像彫刻は、鎌倉時代の様式を踏襲するのみで、時代に則した新しい様式を創造することもなく、造形的には形骸化して魅力のないものが大半である。町内には室町から桃山時代にかけての作例が、前記木田家の小金銅仏を含め三体確認されている。
地蔵菩薩坐像(桑窪・大安寺蔵)は、像高二三・五センチ、桧材の一木造り、彫眼の彩色像である。現状は頭部と胴部を一木の桧材で作った部分しか残っていないが、作域から室町時代の地方仏師の作である。
日蓮上人坐像(亀梨・妙福寺蔵)は像高五一・四センチ、桧材の寄木造り、彫眼の彩色像である。膝前の衣褶表現など装飾的に処理され若干形骸化したところもあるが、頭体部ともに奥行があって面貌に張りもあり、量感豊かな像である。なお、像底部の体部前面材の中央に日蓮の文字を囲むように花押が書かれ、その上部と左右に「□□(慶長カ)八年二月廿八日」「奉綵色」等と断片的に読める墨書銘がある。日蓮と花押が細筆で丁寧に書かれ、他の文字は墨汁を含んで大らかに書かれており、筆法も異なって別筆である。しかし文字の配置等から同時期に書かれたものと思われる。制作時期については、年号の判読に不安もあるが桃山時代の特徴を備えた作である。