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旗本伊沢家の知行所支配

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 旗本伊沢刀之助家は、上総国、下総国と下野国の三か国の六郡の内に十四か村、合わせて表高で三千二百五十石を知行する大旗本である。『寛政重修諸家譜(一七一巻)』によると、旗本伊沢家は、天正十八年(一五九〇)以来の徳川家の家臣として、家康の関東入部以降は次第に領地を増して三千石を越すようになった。元禄十年(一六九七)七月二十六日に「元禄の地方直し」の一環として、知行のうちで今まで蔵米支給となっていた千俵を改めて、下野国塩谷、那須、都賀郡の内に七か村千石の知行所を支給されるようになった。高根沢の中柏崎村百六十九石余りもこのとき伊沢家領となり、明治維新に至ったものであろう。
 旗本伊沢領は、分布略図及び知行所一覧表で見るように三か国六郡にまたがり、実高は三千八百石近くにも及んでいた。しかし、知行地は広く分散し、また支配村といっても、一村を二人から八人の領主に分給された一部分のみを知行する、相給地が多いのが特色であった。典型的な錯綜分散した支配形態であり、支配する際の困難さを予測させるものがあった。

12図 旗本伊沢刀之助家の知行所分布略図
注.図上の番号は、6表の一覧表のNo.を示す。

 
6表 旗本伊沢刀之助家の知行所一覧表
No.知行所村名現市町村名知行高
1下野国塩谷郡中柏崎村塩谷郡高根沢町169石963 (1給)
2同田野原村矢板市162石982 (2給、217.4石の内)
3同 東泉村矢板市235石781 (3給、558.6石の内)
4那須郡湯津上村那須郡湯津上村268石533 (4給、885.4石の内)
5都賀郡 村井村鹿沼市195石035 (2給、589.8石の内)
6同 粟野村上都賀郡粟野町170石5202 (6給、1659.8石の内)
7同 片柳村栃木市198石855 (8給、1941.1石の内)
8下総国葛飾郡前ヶ崎村千葉県流山市340石615 (3給、397.1石の内)
9上総国長柄郡 木崎村千葉県茂原市298石933 (1給)
10同 力丸村千葉県長柄町393石18  (2給、500.7石の内)
11同 桜谷村千葉県長柄町 44石806 (4給、511.9石の内)
12同 徳増村千葉県長柄町335石112 (1給)
13夷隅郡 小高村千葉県夷隅町182石9  (1給)
14同 桑田村千葉県岬町800石622 (1給)
3,797石8,372

注.No.は、前頁分布略図上の位置を示した番号と同じ。
『旧高旧領取調帳・関東編』から