また、株式募集については、一〇月には満株となった模様で、一〇月二〇日に設立総会が開催され、定款の決定、設立費の報告、取締役及び監査役の選任などが行われたようで、そのための事前協議が宇津権右衛門宅で行われている。
特許状とともに出された命令書には、三六年五月四日までに線路実測図等の許可を受けることになっていた。これに沿って予定路線の測量が行われ、鉄道敷地にかかわる土地の買上げも行われたようである(史料編Ⅲ・九四三頁)。
しかし、期限までに線路実測図等の提出ができなかったか、許可が下りなかったかで、四二年三月一七日付をもって特許失効となり、幻の人車鉄道となってしまった。
図17 特許失効の文書(国立公文書館 鉄道省文書)